川柳塔若手同人ミニエッセイ

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川柳塔社の若手同人によるリレー形式のミニエッセイです。
毎週1句と句に関わる句評、創作など担当者が自由に記載します。
担当3名で月ごとにエッセイの数を決めているため、順番が前後することがあります。
各エッセイへのご感想、ご質問は、エッセイのタイトルをクリックいただくとコメント可能です。

過去のエッセイは、最下部の「Older Entries」をクリック、またはアーカイブページで閲覧可能です。

土曜日更新

エッセイ担当者


  

栃尾奏子(とちおかなこ)
本名 藤田奏子
富田林富柳会(大阪)所属
1976年生まれ
特技:酒のツマミ作り
趣味:ホームパーティという名の家呑み

 

   

藤井智史(ふじいさとし)
カブトガニが有名な岡山県笠岡市在住
井笠川柳会所属
弓削川柳社会員
カラオケ好き、マイクを持つと豹変する。
好きな食べ物:お好み焼き、どら焼き
1979年生まれ。蠍座。AB型。独身。

 

森山文切(もりやまぶんせつ)
沖縄県川柳協会所属
川柳塔おきなわ準備室室長
川柳塔WEBサイト管理人
趣味はゲームとビリヤード
せっかく沖縄に住んでいるので
アウトドアの趣味も欲しい。
1979年生まれ。

思い出の場所が見えなくなった丘

担当:文切 思い出の場所が見えなくなった丘
森山文切

私が通っていた小学校は、6学年合計でも100人ほどだった。
人数が少ないので全員の名前を覚えていた、はずだ。
今は全員は思い出せない。アルバムで顔を見たら名前が出てくる人もいるとは思う。

通っていた学校はというと、もうない。数年前に近隣の小学校と統廃合され、今は更地である。
統合された先も、今年の4月から「義務教育学校」として中学校と統合され、小学校すらなくなってしまうらしい。

私が生まれたのは田舎で、30年経った今でもあたりの景色はあまり変わっていない。
でもところどころ、たくさんの思い出があった場所がなくなっている。
全体としては変わらないけれど、大切な場所がなくなっていく。

たぶん、わたしも。

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真夜中に薔薇千本のプロポーズ


担当:奏子

真夜中に薔薇千本のプロポーズ
藤田武人

「お付き合いして下さい。」
「お断りします。」

「ドライブしましょう。」
「嫌です。」

「好きです。」
「そうですか…。」

私達が夫婦になるずっとずっと前の会話だ。
明らかに私ではなく、武ちゃんが私を気に入っていたのだ。
何十回もアタックを受け、何十回もカウンターを返し続け、いい加減にしろ!と思った。
もう本当にお断りしようと考えていた日、こう言われた。

「僕はあなたでないとダメなんです。」

私に誰かが囁いた
「あなたも彼でないとダメなんじゃないの?」

武ちゃんが涙ぐんでいるような気がしたが、泣いていたのは私だったのだろう。

友達には相撲に例えて、「寄り切り婚」と言われている。
もちろんアンタが負けね、と。
解っている。
負けたのを承知の上で私は今日も「アンタが私でないとアカン言うたんや。」と偉そうにリビングに君臨している。
ちなみに武ちゃんから薔薇の花束はもらったことが無い。
ただ、あの日の一言が鮮烈な赤で私を貫いて今に至るのは事実だ。

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ナポレオン飾ったまんま逝きはった


担当:智史

ナポレオン飾ったまんま逝きはった
小島蘭幸

平成30年1月20日、私の祖父は98歳であの世へ旅立った。

私が子どもの頃から、祖父は酒呑みのイメージしかなかった。
ウイスキー、ビール、チューハイ、日本酒などが大好きで、水代わりに呑むくらいであった。

私もワイン、焼酎などが好きなのだが、祖父と一緒に酒を呑んだ記憶が全くないのである(祖父が老健施設に入所した後ぐらいから、私の酒の量が増えてきたのかもしれない)。

ふと食卓の後ろを見ると、サイドボードにウイスキーやブランデーなどが栓を開けず飾られたままである。

「おじいさんと呑めなかったなあ」

結婚して、孫を抱かせてあげられなかったことの次に無念である。

「おじいさん、あの世でもしっかり呑んでな」

酒呑みの孫である藤井智史は、焼酎を呑みながら、このエッセイを作ったのであった。

(平成30年1月23日作成)

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生まれても死んでも時刻告げられる

担当:文切 生まれても死んでも時刻告げられる
川上大輪

生まれた、死んだ、両方に立ち会った経験がある。

生まれた、は三度ある。
3人の子供の出産。幸せなことに3人ともその瞬間に立ち会えた。

死んだ、は一度だけ。
生まれた、と違って瞬間ではないが、祖父の時。
入院していた祖父の元に着いたのは、亡くなって1時間後くらいだろうか。
父と一緒だった。

両方とも時刻を告げられたけど、生まれた、死んだ、本人には告げられた時刻はわからない。

人生が始まったばかりだから。人生を終えてしまったから。

「時刻」が象徴するものを考えさせられた句である。

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気付いてねそっとさざ波送るから


担当:奏子

気付いてねそっとさざ波送るから
鈴木かこ

肉食系女子が世に憚って久しいが、私はまだ波に乗れないでいる。
好き。付き合って。
ポンポンと口から出る女子達は、私とは別次元の生き物だ。
断られたら?
ほかに好きな子が居たら?
そう思うと今日もまた、何にも言えずに日が暮れる。
ダメだな、私。
言葉には上手く出来ないけれど、好きって気持ちは本当なのにな。
切ないなあ…。
ああ、いつかあなたという湖に私という波紋をなびかせたい。
真ん中にポトリと落ちた私の恋心は湖の端から端まで広がって、幾重にも幾重にも重なって…。
いつしか湖を私でいっぱいにしてしまいたい。
お願い。私のさざ波に気づいて。

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