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スーツケース僕が持つうちが持つ

担当:文切 スーツケース僕が持つうちが持つ
西尾栞

旅行中(子供が小さいので最近は帰省だけだが)よく妻と喧嘩になる。
荷物は重いし、子供は泣くし、周りに気を遣いながらの長距離移動である。
二人ともずっと機嫌よくいられるはずがない。

喧嘩の内容は本当に小さなこと。
買ってきたサンドイッチが気に入らないとか、お菓子を食べちゃったとか・・・
那覇空港で、修学旅行の高校生にクスクス笑われたこともあった。

いつかこの句みたいな夫婦になれるといいなぁ

と思うと同時に、今のままでもいいか、という気もしている。

若手同人ミニエッセイトップ

春はお祭り人も獣も巻き込んで


担当:奏子

春はお祭り人も獣も巻き込んで
栃尾奏子

ドアを開ける。

息を吸う。
何だろう、いつもと少し違う。
自転車に乗り、ペダルをこぐ。
頬が、耳がくすぐったい。

そうか。春だ。

胸が高鳴る。なんとも言えない高揚感が全身を駆け巡る。

そうだ。春だ。

恋人とのキスでさえ、重ねるごとにドキドキが薄れてゆくのに。
春は何度迎えても、変わらず僕をドキドキさせる。

待ち合わせの公園では鳥が、猫が、虫達が、それぞれに春を出迎えていた。

ベルの音。振り向くと自転車に乗って手を振る君。
薔薇色の頬。
君もまた、春を出迎えたのだな。

物言わぬ春が、命あるもの全てを巻き込んで行進していく。
春を先頭に愛と命のパレードが始まる。

若手同人ミニエッセイトップ

消費税生かされてこそうなづける


担当:智史

消費税生かされてこそうなづける
藤井智史

高校3年の時、世間では受験シーズンであったが、何のとりえもない

私は、何か頑張ろう、何か残そうと思っていたところ、地元で「税に関
する川柳・標語コンクール」のお知らせを目にした(新聞だったか?
広告だったか?記憶は飛んでいる)

「川柳???、税に対して、何か主張を書けば良いんじゃろうなあ」
と川柳の意味も分からず、五・七・五を無視して、バンバンハガキで
提出(明らかに句じゃないので投句ではない)していたが、後で辞書
で調べると、「川柳:五七五で……風刺する短詩」と書いてある

「ありゃ、全然違うことを書いて出してしもうた
 でも、無制限に提出できるから、まだ大丈夫
 よし、五七五で税に対する私の想いを書こう」

世の中、消費税について騒がれていた

消費税は、生かされないと意味が無いのでは…
その想いを川柳に乗せた

結果は、入賞

「一生の趣味にしていこう」

こうして、川柳ライフの幕は開けられた

若手同人ミニエッセイトップ

思い出の場所が見えなくなった丘

担当:文切 思い出の場所が見えなくなった丘
森山文切

私が通っていた小学校は、6学年合計でも100人ほどだった。
人数が少ないので全員の名前を覚えていた、はずだ。
今は全員は思い出せない。アルバムで顔を見たら名前が出てくる人もいるとは思う。

通っていた学校はというと、もうない。数年前に近隣の小学校と統廃合され、今は更地である。
統合された先も、今年の4月から「義務教育学校」として中学校と統合され、小学校すらなくなってしまうらしい。

私が生まれたのは田舎で、30年経った今でもあたりの景色はあまり変わっていない。
でもところどころ、たくさんの思い出があった場所がなくなっている。
全体としては変わらないけれど、大切な場所がなくなっていく。

たぶん、わたしも。

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真夜中に薔薇千本のプロポーズ


担当:奏子

真夜中に薔薇千本のプロポーズ
藤田武人

「お付き合いして下さい。」
「お断りします。」

「ドライブしましょう。」
「嫌です。」

「好きです。」
「そうですか…。」

私達が夫婦になるずっとずっと前の会話だ。
明らかに私ではなく、武ちゃんが私を気に入っていたのだ。
何十回もアタックを受け、何十回もカウンターを返し続け、いい加減にしろ!と思った。
もう本当にお断りしようと考えていた日、こう言われた。

「僕はあなたでないとダメなんです。」

私に誰かが囁いた
「あなたも彼でないとダメなんじゃないの?」

武ちゃんが涙ぐんでいるような気がしたが、泣いていたのは私だったのだろう。

友達には相撲に例えて、「寄り切り婚」と言われている。
もちろんアンタが負けね、と。
解っている。
負けたのを承知の上で私は今日も「アンタが私でないとアカン言うたんや。」と偉そうにリビングに君臨している。
ちなみに武ちゃんから薔薇の花束はもらったことが無い。
ただ、あの日の一言が鮮烈な赤で私を貫いて今に至るのは事実だ。

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