首のある魚になって泳ぐ駅

投稿者
秋鹿町

首のある魚になって泳ぐ駅
秋鹿町

 
大阪は速い。‬

‪名古屋よりも、東京よりも。‬
‪歩く人々の群れを器用にかわしながら、今自分はどこにいて、どこに向かっているのか頭の中で問いかける。‬

‪今年一月、川柳のオフ会をやると聞いてホイホイと名古屋から特急に飛び乗り大阪に来た。‬
‪学生時代を過ごした街ではあるが、記憶にある大阪駅の姿と現在ではすっかり様子が変わっている。‬
‪攻略済みだった梅田ダンジョンの地図はアップデートされてしまい、もう何が何だかわからない。‬
‪とりあえず、オフ会の会場がセーブポイントとして有名な泉の広場のすぐ近くだったことから、そこを目指した。‬

‪少しだけ前のめりになる。‬
‪よく知っていたはずなのに今では遠くなってしまったこの場所から、また新しい人たちの群れへ首を突っ込んでいくのかと、見えない潮の流れを感じながら駅を泳いだ。‬
‪泉の広場も既に取り壊しが決まっていた。

‪変わっていくものたちに少しの寂しさを感じつつ、これからも私は場所や時間、人に流されながらフラフラと、おっかなびっくり進むのだろう。‬

‪借金で首が回らない、なんてことにならないよう気をつけながら、新しい世界にどんどん首を突っ込んでいきたいと改めて感じた。‬

ミニエッセイトップ

うやむやにできないベルが鳴り響く

投稿者
多舵洋

うやむやにできないベルが鳴り響く
城水めぐみ

 
ツイッターでのご縁で城水さんを通じ、文芸としての川柳を知った。その後、純粋読者として長い間楽しんできたのだが、ある時急にツイッターで川柳のbotを作ろうと思い立った。
きっと発車ベルが鳴ったのだろう。
botを作ってからはあれよあれよの展開だった。次に自ら句作し、投稿し、句会へ行きと、川柳の世界がどんどん広くなっていった。川柳が何者なのかわからないまま、こうではないかと試行錯誤しながら。

ベルが鳴ったら、走り出そう。きっとどこかに通じている。

ミニエッセイトップ

産みの親譲りの姑息ダブル選

投稿者
昌紀

産みの親譲りの姑息ダブル選
伊谷剛

 
 この句は、某全国紙の川柳投句欄に掲載されたものです。
 以前、本社句会のお話で「某マスコミ投句欄の鑑賞」と題して、某全国紙の川柳投句欄の悪口を思いっ切り言わせてもらいました。句そのものは目の付け所もよく、見事に「穿ち」のある句もたくさんあります。ただ、違和感を感じる句(特にリズム感のない句)がそれ以上にたくさんあり、中八、中六、下六、上四、駄洒落、不自然な言い回し 等が実に全体の46%。
 東京のある高名な川柳家の方が「○○特有の社論優先、プロパガンダまがいの駄句を平気で採っています(ムカシはこうではなかった!)。昨日の入選句「このような上官いたなとBC級」(豊洲問題の石原氏のことだそうです。解説がないと分かりません。)、こういった句を○○の選者は本当に秀句だと思っているのでしょうか? △△氏は川柳の勉強をどこかでされたのでしょうか? 何度も提起しますが、やはり考えて欲しいものです。」とコメントされています。
 そうか。よく考えると少し救いがある。やっぱり○○新聞も、僕の大嫌いな「日本□□の会」が大嫌いだったんだ(ただ、この句も解説が必要かもわかりません。大阪の都構想をめぐる知事と市長の出直しクロス選のことです)。

ミニエッセイトップ

水の味忘れた頃に薬飲む

投稿者
藤井智史

水の味忘れた頃に薬飲む
藤井智史

 
コーヒー、お茶、酒類、ジュース類などは、よく飲むのだが、水だけ単独で飲むことは少ない。

ミネラルウォーターを店で買って飲むことも少ない。
(水道水を沸かして、冷まして飲むことはある。)

有り難いことに、健康な為、薬を飲むことも少ない。

薬の箱には、「水またはぬるま湯で…」と書いている。

健康でいられるように、暴飲暴食は今後も避けていこうと思う。

ミニエッセイトップ

クレヨンは小さな嘘がつけなくて

投稿者
真島芽

クレヨンは小さな嘘がつけなくて
西沢葉火

 
 小学生の私に選者をしろなんて、森山文切さんは何を言い出すのだろうかと思いました。今まで何回も句会に参加したりしたけど、一回も選者をしろなんて言われたことはありませんでした。選者は偉い人がするものだと思っていたので、誰も投句してくれないのではないかと心配でした。
 私は正直な句が好きです。だから、この句を特選に選びました。家族が全員川柳をしているので相談しようか迷ったけれど、一度も相談せずに全部自分だけで決めました。だから、初めての選者は自分で納得できました。とてもいい経験になりました。私を選者にしてくれた文切さんに感謝しています。
 
(真島凉さん、真島芽さんに選者をお願いした毎週web句会第100回の結果はこちらから。)

ミニエッセイトップ