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紺碧の彼方で契る空と海


担当:奏子

紺碧の彼方で契る空と海
栃尾奏子

若い頃、空のような人を好きになった事がある。

自由で、見るたびに変わる、その気まぐれにも似た意外性。
ある時は真っ赤な夕焼け空。
ある時は澄みきった青空。
決して手の届くはずのない、高いところにある空なのに、気がつくと雲を従えて近くまで降りて来ていたりする。

降参!
あなたに夢中だ!そう思った。

そんな時、田舎で海を眺めながら、若い私は考えた。
悲観しなくても、もしかしてはあるかも知れない。
だって、決して交わることの無い海と空でさえ水平線の向こうで溶け合っているのだから!と。

残念ながら、私は空と手をとりあうことはなかったが、片思いはいつだってプラス思考で良いと思う。
ウジウジする暇があるなら、
もし!付き合えたら!
もし!デートするなら!
もし!席が隣になったら!
と、ドキドキ妄想する方が楽しいよ!と教えてあげたい。

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人がいっぱい死んでそれからさくら咲く

担当:文切 人がいっぱい死んでそれからさくら咲く
新家完司
私は何事も形から、論理的に入るタイプである。
川柳を始める時もネットで色々と調べた。
川柳の作り方、川柳の句会とは、川柳作家について・・・

その時たどり着いたのが、この句である。
(参照:http://msk333.exblog.jp/425496/

川柳について調べていると、どうやら「平明で深い」というのが川柳のキーワードであるようだったが、いまいちピンときてはいなかった。
この句を見つけた時、これが「平明で深い」ということだと思った。
使われている言葉ひとつひとつはありふれているのに、それが「句」となった時、すうっと心に染み込んでくるのを感じた。

この作家なら、平明で深い句をたくさん作っていると確信し(当時はまだ完司さんにお会いしたことはなかった)、「新家完司 川柳作家全集」をさっそくネット注文した。
(完司さんの句集は複数検索にヒットしたが、「全集」ならその作家の代表句を読めると考えたため)

毎日まだかまだかと郵便受けをチェック。
一週間ほどしてようやく届き、期待に胸を躍らせて句集を開いた。

収録されている句全て、一句残らず、平明で深い、酒の句だった。

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お宝を寄付して真の桃太郎


担当:智史

お宝を寄付して真の桃太郎
藤井智史

桃太郎と言えば、吉備団子を与え、イヌ、サル、キジを従え、鬼ヶ島に鬼退治に行くという昔話であるが、ここ最近、この昔話に物凄くひっかかることがでてきた。

鬼退治に行った桃太郎たちは、鬼をやっつけ、お宝を奪うことになるのだが、奪ったものをお爺さんとお婆さんに渡し、仲良く暮らしたとなっている。

それで、終わっても良いが、福祉の専門学校の講師や柳友も同じことを言っていたのだが、福祉の観点から見れば、そのお宝を少しでも桃太郎が貧しい村の人々に寄付したら、きっともっと立派な人物になったことだろう。

桃太郎が大好きな岡山県民でした。

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女のサミットまず洋服を決めてから


担当:奏子

女のサミットまず洋服を決めてから
山本希久子

主要国首脳会議が始まる。
皆、自国への誇りと愛を身に纏い、その上で、一つの集団として手と手を取り合い目指す高みがある。
 
明日は女子会。
女のサミットだ。
しばらくぶりだからとダレてなどいられない。
手と手を取り合い、秋に結婚する仲間の二次会の打ち合わせなのだ。
 
昔からオシャレなあの子にも。
独身でスタイル抜群のあの子にも。
優雅な暮らしぶりをSNSでアップしているあの子にも。
学生時代、私の片思いの彼といつの間にか付き合っていたあの子にも笑。
 
美に勝ち負けは無いが自分に納得したいと改めて強く思う。
 
自分が生きてきた誇りを輝きに、
自分への愛を煌めく笑顔に変えて纏ったなら…クローゼットを全開にしよう!
 
明日は女のサミットだ。

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ツナ缶の中は幾何学的模様

担当:文切 ツナ缶の中は幾何学的模様
森山文切
沖縄県は、ツナ缶の消費量がダントツで日本一である。
沖縄ではツナ缶は調味料的な位置づけで、塩や醤油と同じ感覚で使われていると言っても過言ではない。
沖縄で暮らし始めて18年になる。最初は沖縄でのツナ缶の立場には違和感しかなかったがすぐに慣れ、料理するときツナ缶を使う機会が格段に増えた。
 
ある日ツナ缶を開けると、幾何学的な模様に見えた。
それまで何度となくツナ缶を開けてきたはずだが、そう思ったのは初めてだった。
これまで開けてきたツナ缶も、きっと幾何学的模様だっただろう。
 
いや、開けてきたツナ缶だけでなくて、これから開けられるツナ缶も、だ。
 
フタを開けたから気がついただけで、ツナ缶の中身は、フタを開けられなくてもずっとずっと幾何学的模様なのである。
ツナ缶には関係なさそうな幾何学的模様という性質を、ツナ缶は持っている。
隠された性質の発現は、本当にちょっとしたきっかけによるのである。

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