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バッカスとぴったり息が合っている


担当:奏子

バッカスとぴったり息が合っている
新家完司

「今日3人呼んでるからな~」
「へーい。了解。」
今夜は我が家で宅飲みパーティだ。
「こんにちは~こんにちは~こんにちは~」
来た来た1、2、3、4…。
ん?1人多い…?
目をみはる、いや、3人だ、見間違いか。
ツマミを作りつつ、調理場で飲む酒は又格別だ。
テーブルでは野郎達が盛り上がっている。
注ぎつ注がれつテンションが上がる。
主人を入れて4人のはずのテーブルに見知らぬモジャモジャの濃ゆいオッサンが見える。目をこする私にオッサンがウインクする。
…バッカスだ!
バッカスが注いだ酒は神の霊力を帯びつつ主人のグラスに。
主人から、友人Aに、AからBに…酒の輪の数珠繋ぎ…では無く、アルコールの玉突き事故だ!
バッカスが私を手招きする。
テーブルは佳境だ。
あぁ、ツマミ作りも飽きたから、そろそろそっちへ行ってやるとも!

夜が明けるとバッカスは消えていた。
きっと、今夜もどこかの楽しい酒気に誘われて、どこかに登場するのだろう。
酒が飲める幸せ。
バッカスは平和の象徴だ。

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己に克てるまで婚活は続く


担当:智史

己に克てるまで婚活は続く
藤井智史

終わりそうだと思っていた婚活もあと一歩のところで破談。

「また一からやり直しか…」

暫くは、心もボクシングでワンツーパンチを
くらったかのようにぶっ倒れていた。

「私の人生は終わりか。」

ボクシングの審判の声が聞こえる。

「ワン、ツー、スリー、フォー…。」

薄れゆく意識の中で、
「おい、智史 。それで良いのか。おまえは、まだ勝っていない。
それで、この世を去ると言うのか。」
と天の声。

「そうだ、私は勝っていない。この世で1勝するまでは死ねない。」

「エイト、ナイン。」

「うぉーっ。」

歯をくいしばり、立ち上がった。

まだ、私はKOされていないのだ。

藤井智史は、結婚を諦めてはおりません。
己に克ち、皆様の前で結婚報告ができるように頑張ります。
応援宜しくお願い致します。

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ていねいに洗う落ちたら割れる皿

担当:文切 ていねいに洗う落ちたら割れる皿
八木千代

我が家では洗い物は気が付いた人が行うことにしており、私も妻もほぼ毎日洗い物をする。
子供が3人いるが皆まだ小さいので、家事一つ一つに時間をかける余裕はなく機械的に行っている。

ていねいには、洗っていない。

皿は、落ちたら割れる。
当たり前のことだけど、普段の洗い物でそのことを意識しているかというと、全くしていない。
機械的に作業している私の手にある皿は、落ちたら割れるのである。

漫然と機械的に過ごしている日常で、私の中にある落ちたら割れるもの。
皿以外にもありそうだ。

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満願の日の美しきかな男


担当:奏子

満願の日の美しきかな男
小島蘭幸

拍手喝采、スピーチの男の横顔は自信に満ち端正で美しい。
プロジェクトは十年の海外勤務を経て、見事に成功。
会社に莫大な利益と宣伝効果をもたらし、悲願だった研究の正当性も立証出来た。
男は満月を手に入れたのだ。
拍手の中に、恩師がいる。
杖をつき、支えられながら顔を皺くちゃにして泣いている。
上司がいる。
若さとは勇気だと送り出してくれた事を思い出す。
かつての仲間がいる。
そう、あの日の仲間が居たから今の僕がいる。
花束贈呈。
…!
仲間の間から君が大きな花を抱えて柔らかく笑う。
…ありがとう。
この満月は、ここにいる全ての人と、あの日、君が僕に見せなかった涙で出来ているのだと改めて思う。
ありがとう。ありがとう。ありがとう。
頭上の満月は感謝の数だけ美しく輝いた。
(蘭幸主幹、全日本川柳協会理事長就任
おめでとうございます。)

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電話ボックス女がひとりいて秋に


担当:奏子

電話ボックス女がひとりいて秋に
小島蘭幸

あなたの夢は私の夢。
あなたの志は私の志。
ずっとずっとついて行きたいけれど
あなたの指差す方に私の行けない場所が出来た…。
あなたを支える旅は、きっとここで終わりだ。
後悔はしない。
私はあなたを全身全霊で愛したから。
ここから先は、新しい仲間と旅を続けて
いつか夢をその手に掴んで、その時は…私を思い出して。
私の人生にあなたという時間をありがとう。そしてさようなら。

電話ボックスを出る。
秋の風が頬を撫でる。
涙が乾く。
口角を上げる。
大丈夫、あなたも私も夢へ歩き出す。
空は天高く澄みきっている。
~続く
(蘭幸主幹、全日本川柳協会理事長就任
おめでとうございます。)

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