Posts in Category:  

若手エッセイ2周年

「川柳塔若手同人ミニエッセイ」は開始から2年を迎えました。 

今月は3名が今年9月に亡くなられた真島清弘さんの句をテーマにエッセイを書きます。
誰がどの句について書くかは真島美智子さんに決めていただきました。
 
結社を超えて、世代を超えて川柳をつないでいくことは川柳界全体の課題です。
川柳界の若手として課題と向き合っていく所存です。
 
開始から2年間エッセイを担当した栃尾奏子さんは、公私のご多忙につき来年から担当を外れます。
これに伴い、若手同人ミニエッセイの運用方法が変わります。詳細は年明けに発表致します。

若手同人ミニエッセイトップ

難波でも行くように子はイタリアへ

担当
文切
難波でも行くように子はイタリアへ
加島由一
川柳塔誌電子化事業で公開している、896号同人近詠巻頭から。

急速に世界の距離が縮まっている。

航空機の進化による物理的な距離ももちろんであるが、webの発展による精神的な距離の縮まりが顕著だ。
SNSによって外国の人ともリアルタイムでコミュニケーションが可能となり、一緒に住んでいる家族よりSNSで仲良しの外国の人との方が会話が多いなんていうことも現実に起こっている。

川柳界でも距離の縮まりを感じている。私ですら感じているのだから、長年川柳界におられる方はなおさらだろう。
ネットでは結社を超えての交流が盛んだ。結社のみならず、ネットは年代やレベルの壁も超えていく。
私のメーリングリストをあらためて見ると、多くの著名な方とコミュニケーションがあり、我ながら感心する。私が川柳を始めたのが10年前だったら、こうはいかなかっただろう。

もちろんこの距離の縮まりはいいことばかりではないとは思うが、デメリットよりメリットの方が大きい。
川柳界の中だけではなく、川柳をしている人としていない人の距離も少しずつ縮まっていると感じている。
川柳との距離が日本からイタリアくらいだったものが、難波に行くくらいの感覚になってきているかもしれない。

まあ、沖縄からだと難波も結構遠いのだけど。

若手同人ミニエッセイトップ

かくれんぼしましょうあべのハルカスで


担当
奏子

かくれんぼしましょうあべのハルカスで
丹下凱夫

人はその昔、神の世界に届くバベルの塔を立てようとしたと言う。

その建設途中の塔は遥か天を仰ぎ、雲がかかったとか、かからなかったとか…

「シー!静かにしなよ、見つかったらどうするのさ。」
「見つかったって、人間は僕たちのこと、見えないじゃないか。」
「最近は勘のいい人間もいるんだよ。神さまにも注意されたろう?」
「チッ。君という奴は本当に融通がきかないなあ。」
「さあ、羽根をたたんでエレベーターであがるんだよ。」
「フン。神のエリアと人間のエリア。何千年か前に交わした約束だからな。覚えているのは神さまくらいだよ…。」
「そう言わずに、さあ。確認しに行くよ。」
「ここは余裕で白だな。スカイツリーは危なかったけどな。」
「なあ、君…やはり久しぶりにかくれんぼしないか。」
「羽根はあり?なし?」
「もちろん有りさ!」

バサバサバサッ!

「ねえ、ママー。窓のお外に、飛んでるお兄ちゃん達がいるよ!」
「バカな事いわないの、天使でもない限り飛ばないわよ。」

さあ、あなたも一緒に、かくれんぼしませんか、あべのハルカスで。

若手同人ミニエッセイトップ

出陣の前にお好み焼きを食う


担当
智史

出陣の前にお好み焼きを食う
藤井智史

私の大好物は、お好み焼きです。

川柳大会の前日か当日の朝、お好み焼きを食べることが、恒例になっています。

ある意味、験担ぎかもしれない(大方の人は、カツ丼だと思いますが…)。

全国の皆さん、藤井智史に、是非、美味しいお好み焼き屋を教えてください。

宜しくお願い致します。

若手同人ミニエッセイトップ

同窓会握手が上手くなった彼

担当
文切
同窓会握手が上手くなった彼
居谷真理子
川柳塔誌電子化事業で公開している、900号同人近詠巻頭から。

大学進学から長く沖縄にいるので、小中高の同窓会の類にはほとんど参加したことがない。
唯一といっていいのが、成人式のとき。
当時のままというくらい変わっていない人もいれば、面影が全くない人もいた。

私は後者。小学校の頃は成績はほぼオール5、生徒会活動もしていた。
そんな私が金髪チャラ男になったのは皆びっくりしただろう。

揚句の「彼」も変わってしまったタイプだ。
ただそれに気が付いたのは「わたし*」だけかもしれない。
「彼」に「変わってないね」と声をかけた人さえいたかもしれない。

「久しぶり」
と笑顔で「わたし」に手を差し出してきた「彼」
目を合わせられず、顔を見ることができないまま「彼」の手を握る。

「わたしの知っている彼じゃない」

その瞬間「彼」は思い出だけの存在となった。

もう別人となった彼と笑顔で昔話をする「わたし」の変化に、「彼」は気が付いただろうか?

*句の主語としての「わたし」

若手同人ミニエッセイトップ