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耳で聴く花火あなたの腕の中


担当:奏子

耳で聴く花火あなたの腕の中
栃尾奏子

花火大会に、皆で行こうよ!
誰が言い出したか教室が騒ぐ。
18時にいつもの場所集合!
慣れない浴衣に下駄、人混み。
携帯も無い、メールも無い。団体は少しずつ散り散りになって行った。
新学期以来気になっているAくんと何時の間にやら2人になっていた。
神様のサプライズなのか、意地悪なのか、話が続かない。
ドン、ドン、ドン。花火が始まった。
助かった。これでしばらく話さなくても良さそうだ。
大玉が打ち上がり佳境。観客は益々増えて、もうすし詰めだ。
あ!脱げかけた下駄を気にした瞬間向かい合わせになってしまった。
顔を上げるとAくんの顔があると思うと顔が上げれない…。
ドン、ドドン。花火は続く。
早く終わって!
やっぱりまだ終わらないで!
あの夏の花火、私はラストのナイアガラの色を知らない。

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A4の角でにやりとする悪魔


担当:智史

A4の角でにやりとする悪魔
藤井智史

「今日は、沢山勉強するか。」

テキストを開く。

P.1 「ウンウン」
P.2 「ほうほう」
P.3 「?」
P.4 「zzz…」

「ケッケッケッ、私の魔術に簡単にかかりおったわい」

A4のテキストの角でにやりとした悪魔は、睡魔という、強烈な魔術をかけてきたのであった。

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塩水の理由を知ってからりんご

担当:文切 塩水の理由を知ってからりんご
森山文切

りんごは皮をむいてそのままにしておくと変色してしまう。
りんごに含まれるポリフェノールが空気に触れると酸化酵素が働き、酸化してしまうためである。
塩水に浸けるとポロフェノールの表面にナトリウムイオンが付着するため、酸化を抑えることができる。

りんごは、このことを知っているだろうか?

何も知らずにしょっぱい塩水に浸けられているとしたら、りんごにとってはただの拷問である。
しかし、「酸化を防ぐため」という理由をりんごが知っていれば、塩水も受け入れられるかもしれない。

辛いことばかりの世の中だけど、その辛さが自分にもたらすことを知って初めて、本物の「りんご」になれるのではないだろうか。

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足の裏から女ひとりのものがたり


担当:奏子

足の裏から女ひとりのものがたり
森中惠美子

2人の子供達はもう成人で、妻はずっと専業主婦。妻は夫が浮気をしている事を知っているが誰にも相談できずに日々を過ごしている。
ある日、ママ友に「ねえ、カカトとかちゃんとこすってる?」と言われて自分の足の裏と向き合う。
妻役は黒木瞳。何年も前の映画のワンシーンだ。
平等に二本足で生きて、足の裏までチェックされる。女とは何と不平等な生き物なのだろう…。
スーツにパンプスの女。
ハイヒールを鳴らす女。
野良仕事の女。
前後に子を抱き歩く女。
裸足の海女。
100人の女に100の足の裏、そして100のものがたり。
当たり前かもしれないが、私にも1つのものがたり。
あなたの足の裏にも輝くものがたり。

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三角を積んだら上が狙えない


担当:智史

三角を積んだら上が狙えない
藤井智史

何もないところから、色々な経験を積んで、成功を納める。

「よしっ、もう何もしなくて大丈夫だ」と思うかもしれないが、私に住み着いている虫は、「もしもし、明日からそれで良いですか。安心は、保証されていません」と私の心に囁いてくるのだ。

そうだ、私は、チャレンジャー。安心などできぬ。

だから、一生三角を積むことは無いだろう。

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