投稿者
木本朱夏 |
平凡な赤い金魚が生き残る 草地豊子
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デメタンは妹のところにいた黒い出目金だ。仲間を追いかけ回すので持て余されて我が家へ来た。家の金魚は夜店でよく見る普通の金魚。デメタンはさっそく家の子を追いかけ回した。棒きれを振りながら友達を追いかける昭和の餓鬼大将のようだ。小さい水槽に隔離した。20分ほどして見るとしょんぼりしている。可哀想に思って元の水槽に戻してやるとまたもや追いかける。逃げる。追う。逃げる。水槽の中は追跡のサンバ状態だ。ふたたび隔離する。
2時間ほどして覗いてみると水槽の隅の水草の下に蹲っている。しおらしく項垂れている様子はまるで「ハンセイ」のポーズだ。思わず笑ってしまった。妹は「金魚に対する虐待だ」と怒ったが、以後デメタンは乱暴を働くこともない。お仕置きの効果はあったようだ。 金魚でさえ反省する。なのに何故人間界にイジメはなくならないのだろうか。
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