担当
奏子 |
かあさんと呼ばれてお母さんになる
栃尾奏子
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私はハッキリ言ってダメな奴である。
見栄っ張りなので出掛けの際は着飾っていても、家の中が片付いていない事などザラ。
アルコールの誘惑にも弱く、夜遊びばかり、今ほど厳しくなかった事もあり、煙草の悪癖さえ持ち合わせていた。
そんな時、青天の霹靂。
お腹に命が宿る。
文字通り私は雷に打たれた。
私だけの身体では無いこの罪悪感。
これから人ひとりの人生を左右してしまう責任感。
後はもう今までの行いを悔いあらためて無我夢中笑。
この痛みに耐える位なら殺してくれ!と陣痛に耐え、未熟児だった為、1時間おきに授乳し、万年睡眠不足。
毎日が怒涛のように過ぎて行ったある日。
「ま〜ま。まま。」
今まで受動態だった命が私を呼ぶ。
たったそれだけだが、なんと素晴らしい出来事であったか。
そうか、母は初めから母ではなく、母と呼ばれて初めて母になるのだ。
私の母も、私の祖母も、皆、そうして母になったのだな。
不自由にさえ思えた母という職業は、あの日から無限大にさえ思う。
私にとって娘とは、いつも未来に架かる虹の橋だ。(5月生まれの君へ贈る母からのエッセイ)
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