どんなもんだとアインシュタイン舌を出す

投稿者
油谷克己


どんなもんだとアインシュタイン舌を出す 澤井敏治

ブラックホールは、物理学者アインシュタインの一般相対性理論を基に約百年前に予言されていたが、周囲の現象などから間接的に観測することしか出来なかったそうだ。日本の国立天文台を含む約80研究機関の200人を超すチームが2012年に結成され、電波観測の結果、4月10日、M87銀河のブラックホールの撮影に成功したと発表された。オレンジ色に輝くリング状のガスの中に、黒い穴が浮かび上がった写真が朝刊の一面を飾った。リングの直径は1,000億km。気の遠くなる話である。

アインシュタインといえば、あの舌を出した写真が有名である。天才と狂人は紙一重とかいわれるが、アインシュタインのあの写真を見る限り、偉大な物理学者というより、いたずら好きなおじいちゃんを想像してしまう。それがどんな頭脳をされているのか、100年も前に、ブラックホールの存在を看破していたとは、正に世界が誇る偉大な人物の上位に位置する人物であったと得心が行く今回の快挙である。いたずらっぽい顔で、どんなもんだと長い舌を出しているのだろうなと思うと、ほほえましさが湧いてくる。
愛すべき人物像が、この句から感じとれる。

(川柳わかくさ5月号より転載)

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