手と足をもいだ丸太にしてかへし

投稿者
木本朱夏

手と足をもいだ丸太にしてかへし
鶴 彬

 
3年前から金魚を飼っている。2年前の12月、そのうちの1匹が病気になった。水槽の底に添って泳ぐというよりヨロヨロと這い、疲れるとじっとして、また思い出したように這う。まるで金魚のリハビリだ。動く時に電流が走ったように体中をビビッビリビリッと震わせる。で、名前はビビビ。
そうして少しずつ泳げるようになったが尾腐れ病で尾ひれが取れた。背びれもほとんど無くなった。尻びれも消えた。4センチにも満たぬ雀のような色合いの地味な金魚。わずかに残った小さな胸びれを必死に動かして泳ぐ。泳ごうとしている。あっちへよろよろ、こっちへふわふわ。
1年3カ月経った。芋虫のような状態でビビビは生きている。必死に泳いでいる。
ビビビに訓えられたこと。満身創痍になっても「生きるべし」と。

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