同窓会握手が上手くなった彼

担当
文切
同窓会握手が上手くなった彼
居谷真理子
川柳塔誌電子化事業で公開している、900号同人近詠巻頭から。

大学進学から長く沖縄にいるので、小中高の同窓会の類にはほとんど参加したことがない。
唯一といっていいのが、成人式のとき。
当時のままというくらい変わっていない人もいれば、面影が全くない人もいた。

私は後者。小学校の頃は成績はほぼオール5、生徒会活動もしていた。
そんな私が金髪チャラ男になったのは皆びっくりしただろう。

揚句の「彼」も変わってしまったタイプだ。
ただそれに気が付いたのは「わたし*」だけかもしれない。
「彼」に「変わってないね」と声をかけた人さえいたかもしれない。

「久しぶり」
と笑顔で「わたし」に手を差し出してきた「彼」
目を合わせられず、顔を見ることができないまま「彼」の手を握る。

「わたしの知っている彼じゃない」

その瞬間「彼」は思い出だけの存在となった。

もう別人となった彼と笑顔で昔話をする「わたし」の変化に、「彼」は気が付いただろうか?

*句の主語としての「わたし」

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