担当
奏子 |
誰よりも母はあなたを信じてる
栃尾奏子
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鈍臭い子だった。
競う気が無いのか、ビリも多かった。
ゴール前で私を見つけて、手を振って…また…ビリ。
誰も見本が無いので、踊りも下手で、創作ダンスは娘中心に踊っているのか…と思うほど、1人だけちゃんと踊れていなかった。
中学にあがり、何を血迷ったのか、陸上部に入った。
毎日毎日練習で遅い帰宅を心配した。
体育祭が近づいて、娘が私に言った。
「私、一等賞だから。」
なんだって、今までビリケツのあんたが一等賞?という気持ちをこらえ、頑張ってと言った。
当日カメラを片手に個人走を待つ。スタートで撮るか、ゴールで撮るか。長い長い一直線、無難にスタートで…と思ったが足はゴールへ向かっていた。
…私、一等賞だから。
娘の声がした。
そして娘は約束通り、一等賞でゴールを駆け抜けた。
娘は私に母さんどこで見てたの?スタートにいなかったけど。と聞いた。
私はブッチギリにテープを切る娘をとらえた渾身のカメラ写真を見せて言った。
ウチの子は必ず一等賞だと思ったから。
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