拍手喝采、スピーチの男の横顔は自信に満ち端正で美しい。
プロジェクトは十年の海外勤務を経て、見事に成功。
会社に莫大な利益と宣伝効果をもたらし、悲願だった研究の正当性も立証出来た。
男は満月を手に入れたのだ。
拍手の中に、恩師がいる。
杖をつき、支えられながら顔を皺くちゃにして泣いている。
上司がいる。
若さとは勇気だと送り出してくれた事を思い出す。
かつての仲間がいる。
そう、あの日の仲間が居たから今の僕がいる。
花束贈呈。
…!
仲間の間から君が大きな花を抱えて柔らかく笑う。
…ありがとう。
この満月は、ここにいる全ての人と、あの日、君が僕に見せなかった涙で出来ているのだと改めて思う。
ありがとう。ありがとう。ありがとう。
頭上の満月は感謝の数だけ美しく輝いた。
(蘭幸主幹、全日本川柳協会理事長就任
おめでとうございます。)
ありがとうございます。
二部作のエッセイは、蘭幸主幹の著書、再会の中から、「再会」をテーマに書きました。
若手の中で多分私が一番書く手が遅く文切さんにはいつも迷惑ばかりかけています。
毎回、読んで下さってるんですね。
とても嬉しく、また、励みになります。
30日間に3回のエッセイ。お疲れさまでした。
昨年の12月から毎週楽しませていただいている「若手同人みにエッセイ」。三人での交代は月によっては2回も担当が回ってくる。大変やろうなあ。でも、回を追うたびに内容に味が出てきています。真島 凉ちゃんや芽ちゃんも登場させて来られたし、そしてこの2回の「蘭幸主幹、全日本川柳協会理事長就任 おめでとうございます」。「ぐっと来るものがある」。ありがとう。