担当:文切 |
一斉に開く告別式の傘
森山文切 |
ある告別式でのこと。
故人を偲び多くの人が告別式に来ており、会場の外に人があふれていた。
「いい人だったねぇ。」「あんなに若いのになんで・・・」
外で話をする人の中には、すすり泣いている人もいた。
すると、ぽつぽつと雨が降ってきた。
次の瞬間、たくさんの傘がぱっと開いた。一斉に。
みんな話を続けている。ほとんど反射的に傘を開いたことだろう。
皆すすり泣きながら「悲しい」と言いつつも、自分が濡れないように傘を開いた。
これはエゴだろうか?私が今見た景色は、エゴの象徴なのだろうか?
答えは否である。
私が見た景色は生きることの象徴である。
どんなに悲しくても、どんなに辛くても、眠たくなったら寝て、腹が減ったら食べ、雨が降ったら傘を開いて、人は生きてゆかねばならない。
私が告別式で見た一斉に開く傘は、生とは何かの、少なくともその一端を示していた。
若手同人ミニエッセイトップ
生と死、二つの世界観が見事別れる瞬間、自分は生という世界を生きている…そう自覚する瞬間。
私達はもっと強く、生きている事を大切におもえるのでは…と。
コメントありがとうございます。
逝ってしまった人たちは、死という世界を生きているのでしょうか。
生きている人が、その人のことを覚えている間は、向こうの世界に行くことができないという話を聞いたことがあります。
生と死、不思議な世界です。
寒い日でした。出棺の時でした。見送るまでの何分の間 皆 ぶるぶる…ぶるぶる。
さすが 中に入ってしまう人はいなかった。
でも 雨なら 傘を差すでしょうね!
コメントありがとうございます。
雪が凄いようですね。体調を崩されないようにお気をつけください。
雪だと傘ではなくまた違った具象になりそうですね。