題
「落ち着く」
青砥たかこ 選
ワンコそば落ち着いてなどいられない | 荘子隆 | |
落ちつきがちょっと出てきた傘寿前 | のひろ | |
定位置にどっかり腰がおさまった | 柳谷益弘 | |
夜桜や妻のうなじに落ち着かず | 氷川の杜 | |
電話待ち 鼓膜が落ち着きをなくす | 汐海岬 | |
落ち着いた顔でカラスはごみの中 | 絹田あさ | |
もの忘れ増えて落ち着く夫婦仲 | 富田保子 | |
退職後混濁未だ落ち着かず | 上平祥 | |
落ち着いて同意する旨タップする | さとち | |
吹き溜まり ここで芽を出すことにする | 川本真理子 | |
落ち着いて見ればなんでもない仕掛け | 沢田正司 | |
転がらぬ石です苔が生えました | ホッと射て | |
美食家も〆の茶漬けで胃を洗う | 前川真 | |
心臓の爆音閉じ込めるコルク | 葵 | |
落ち着いて風向きを読む出世凧 | 白鳥象堂 | |
落着のお白洲に舞う花吹雪 | 光畑勝弘 | |
下り坂すぎて落ち着くふくらはぎ | 田村ひろ子 | |
やんちゃして落ち着く先は妻の膝 | 内田志津子 | |
落ち着きをなくした負けたなと悟る | 西口いわゑ | |
そわそわもドキドキも消す深呼吸 | 高浜広川 | |
落ち着いて選んでいれば別のひと | 石川柳寿 | |
鮒釣りの腕時計から針の音 | 斎藤秀雄 | |
落ち着きは西方浄土見てるよう | 中内孚彦 | |
もう誰も喧嘩は売らぬ棺の中 | 勢藤潤 | |
煩悩をもぐらたたきで落ち着かす | 藤井智史 | |
新緑に落ち着きが出るランドセル | 安西建次 | |
結局は生まれ故郷の酒を酌む | 村田博 | |
不味いけどなぜか落ち着くレストラン | 船岡五郎 | |
仮面一枚脱いでお茶漬け食べて居る | 森廣子 | |
とにかくも落ち着くために淹れるお茶 | 澁谷さくら | |
病状が落ち着き直ぐに欲しい酒 | 伊藤良一 | |
披露宴で挨拶終えた主賓席 | 門田吉雄 | |
佳 作 | 落ち着かせたいので弱火からトロ火 | 橋倉久美子 |
祭囃子落ち着いてなどいられない | 大島ともこ | |
いつもの席でいつもの人と飲んでいる | 平井美智子 | |
落ち着こう今ジョーカーが手の中に | 西口いわゑ | |
落ち着くね復讐なんか思うとき | 柴田比呂志 | |
人の句 | 落ち着くと面白くない人になる | 城崎れい |
地の句 | 落ち着いているが時々不整脈 | 大木雅彦 |
天の句 | 落ち着いて詐欺師を諭すおばあちゃん | 松岡篤 |
題
「落ち着く」
石橋 芳山 選
横たわる円周率のど真ん中 | なお | |
定位置にどっかり腰がおさまった | 柳谷益弘 | |
吹き溜まり ここで芽を出すことにする | 川本真理子 | |
転がらぬ石です苔が生えました | ホッと射て | |
大仏の尻のほくろに諸説あり | 西沢葉火 | |
ウインクも流し目もない家で飲む | 安藤なみ | |
シャガールの馬がなんだか肥えてきた | 米山明日歌 | |
流されて妙に落ち着く橋の下 | 板垣孝志 | |
スポンジが落ち着くまでの三日間 | たごまる子 | |
恋破れまた図書館の奥の席 | 居谷真理子 | |
落ち着かせたいので弱火からトロ火 | 橋倉久美子 | |
残り香を着て過去も抱きしめている | 荒牧千晴 | |
削除押し消してゆくただ消えてゆく | 荒牧千晴 | |
深呼吸わたしはひとりきりじゃない | 尾崎良仁 | |
冷静に見るとそうでもない美人 | すずき善作 | |
メビウスの輪を走る川内優輝 | 山田こいし | |
行く先は昔ながらの喫茶店 | フーマー | |
父親のような顔したブルドック | 上原稔 | |
姿見に落ち着く場所がない比丘尼 | 福村まこと | |
高鳴りがゆっくり沈む「ぐりとぐら」 | 大内せつ子 | |
鮒釣りの腕時計から針の音 | 斎藤秀雄 | |
落ち着きも限度があろう「ナマケモノ」 | 塚越孝一 | |
待っていた雨へ農夫は手を伸ばす | 野平光太郎 | |
ウォシュレットたばこ一服いい気分 | 若芽 | |
駆けつけ三杯ほど飲みましたので | 雨森茂喜 | |
先着の後方左はしの席 | 徳重美恵子 | |
仮面一枚脱いでお茶漬け食べて居る | 森廣子 | |
猥雑な言葉が消える無菌室 | 森山盛桜 | |
ぼんやりとペンダコといる24時 | 久保卓子 | |
欠けていたピースようやくはまった絵 | 澁谷さくら | |
鼻高いランチのあとのソーダ水 | 稲垣康江 | |
胡坐かく父はやっぱり畳の間 | 山本昌乃 | |
佳 作 | いつもの席でいつもの人と飲んでいる | 平井美智子 |
落ち着いた暮らし退屈とも思う | うちだあつこ | |
落ち着くと面白くない人になる | 城崎れい | |
落ち着いているというより無関心 | 森下博史 | |
味噌よりも豚骨よりも醤油だな | 稲垣康江 | |
人の句 | 水になる前の湿りのなかにいる | 怜 |
地の句 | 断定の助動詞にそう云われたら | 雨森茂喜 |
天の句 | 珈琲は濃い目にひとりきりの午後 | 新家完司 |