題
「鳴 る」
門脇かずお 選
目覚ましを鳴らして朝の身を削る | かきくけ子 | |
思い出を刻む汽笛がボーと鳴る | 大木雅彦 | |
号砲へこの先自分との戦 | 竹中正幸 | |
雀荘に届かないのか除夜の鐘 | 水月 | |
反対を言えない椅子がギーと鳴る | 大内せつ子 | |
鳴きまねをして鶯に応答す | つれづれ | |
たこ焼きと苺が鳴らす愛の鐘 | 藤井智史 | |
胡同を抜けて悲しい風が鳴る | 森廣子 | |
聞き流すわけにもいかぬ非常ベル | 吉崎柳歩 | |
大きく鳴る方へ傾く多数決 | 糀谷和郎 | |
楽しかったあの頃が鳴るオルゴール | 川本真理子 | |
家電から知らない人の声が鳴る | 川本真理子 | |
おかえりとスリッパの音愛の音 | 米山明日歌 | |
鳴き砂の音ラッピングしたくなる | 笹倉良一 | |
リズムよく鳴る必要がある木魚 | 西山竹里 | |
現役で鳴らした腕にかかる声 | 小林祥司 | |
死者だけが聞く退場のホイッスル | アズスン安須 | |
さみしさの底で背骨を軋ませる | 柴田比呂志 | |
二つ目の目覚まし鳴って朝になる | 由美 | |
もう少し手の鳴るほうで生きてみる | 高田まさじ | |
手の鳴る方へ介護の足が揃わない | あそか | |
独り居に朝昼晩の電子音 | 澤井敏治 | |
背骨鳴る初めて生まれ出たように | 月波与生 | |
詩画集の行間に鳴る鈴の音 | 春川秋男 | |
遮断機が祈りの音で降りてくる | 青砥たかこ | |
本当の平和の鐘はいつ鳴るか | ペースかめ | |
ハーモニカ鳴らせば父が近くなる | 十六夜 | |
止めてもらえずいつまでも鳴っている | 橋倉久美子 | |
時折は亡夫に貰うホイッスル | 矢倉五月 | |
マナーモードなのにあなたへの動悸 | 美馬りゅうこ | |
戦わず指を鳴らしてばかりいる | 城崎れい | |
擦りガラスこすると春の空が鳴る | 水たまり | |
佳 作 | 開演のベルが鳴ったような春野 | 山路橙葉 |
銅鑼が鳴り金正男が殺される | 森山文切 | |
としよりの鐘はギンゴンガンと鳴る | 新家完司 | |
マナーモードもそれなりに鳴っている | 由美 | |
トランペット鳴らして星をまき散らす | 青砥和子 | |
人の句 | 王様の気分にさせるファンファーレ | ポルテーニョ |
地の句 | ペコポコと鳴って手足が老いてゆく | 平井美智子 |
天の句 | 指パッチンおとこの夢のたわいない | 美馬りゅうこ |
題
「鳴 る」
木本 朱夏 選
ぽきぽきと指を鳴らして春を待つ | よもやま話 | |
目覚ましを鳴らして朝の身を削る | かきくけ子 | |
ポケットに飴玉一個靴が鳴る | めぐ | |
軍靴高鳴るスーダンへ石垣へ | 山本進 | |
黒鍵のエチュード恋の風が鳴る | 大内せつ子 | |
反対を言えない椅子がギーと鳴る | 大内せつ子 | |
駆け上がる癖が抜けない発車ベル | 坪ようこ | |
適齢期進軍ラッパ鳴り響く | 大釜洋志 | |
耳鳴りの耳で聴いてるボブディラン | 吉崎柳歩 | |
大きく鳴る方へ傾く多数決 | 糀谷和郎 | |
線量計戻りたい地が鳴き止まぬ | 糀谷和郎 | |
ここからはロボットになる始業ベル | 笹倉良一 | |
たそがれに人恋しげな鐘が鳴る | 石川柳寿 | |
待てなくて園児が跳ねる床が鳴る | アズスン安須 | |
としよりの鐘はギンゴンガンと鳴る | 新家完司 | |
目覚ましが鳴る日曜の青い空 | 柴田比呂志 | |
さみしさの底で背骨を軋ませる | 柴田比呂志 | |
テロ悼む鐘に地球は無反応 | 森山盛桜 | |
サイレンを聞かぬ日は無い街に棲む | 両澤行兵衛 | |
シナリオにない踏切の鐘が鳴る | あそか | |
そうかそうかと天空で鳴る父の鐘 | 田村ひろ子 | |
窓際の電話が鳴って欠伸する | 熊内繁生 | |
春のベル鳴って始まる花粉症 | 岩崎誠治 | |
十三回打って途絶えた古時計 | 光畑勝弘 | |
遅い春古い時計が鳴り終える | 板垣孝志 | |
海鳴りの響き答えは出ていない | 海賊芳山 | |
閻魔さままだ呼び鈴は押さないで | 上山堅坊 | |
王様の気分にさせるファンファーレ | ポルテーニョ | |
そっぽ向きながら夫婦が鳴らす鈴 | うちだあつこ | |
春眠を蹴飛ばしアラームが響く | 片山かずお | |
骨揚げの夜は独りの骨が鳴る | 岸井ふさゑ | |
指パッチンおとこの夢のたわいない | 美馬りゅうこ | |
佳 作 | 路地裏に胸が高鳴る秘密基地 | 白鳥象堂 |
ペコポコと鳴って手足が老いてゆく | 平井美智子 | |
雷鳴に負けずに叫ぶ愛してる | 雨森茂喜 | |
さくら咲き日本人の胸が鳴る | 水野黒兎 | |
トランペット鳴らして星をまき散らす | 青砥和子 | |
人の句 | 死者だけが聞く退場のホイッスル | アズスン安須 |
地の句 | 忘れないでと夜に鳴りだすオルゴール | アゲハ |
天の句 | ぺんぺん草 鳴る寂しさにいるこの世 | 丹下凱夫 |