新家完司ミニ句集

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新家完司ミニ句集【春夏秋冬】

新家完司(しんけかんじ)
川柳塔社理事長
毎日新聞鳥取柳壇選者
「大山滝句座」世話人代表

著書
新家完司川柳集「平成元年」
新家完司川柳集(2)「平成五年」
新家完司川柳集(3)「平成十年」
新家完司川柳集(4)「平成十五年」
新家完司川柳集(5)「平成二十年」
新家完司川柳集(6)「平成二十五年」
「川柳作家全集 新家完司」
「川柳の理論と実践」
*掲載時点で新葉館またはAmazonの在庫のあるページにリンク

PDF版:下の画像かここをクリック


はじめに
 元号というものに特別な思い入れなどはない。「平成元年」が「オンリーワンでキリが良い」と思ったので、最初の句集のタイトルに拝借しただけのこと。以後はご覧の通り、楽な道を選ぶ横着な生き方がそのまま現れている。
 来年は「平成三十年」であり、第7集を出すタイミングになるが、「平成三十年」とするか、新しい元号を借用して「〇〇元年」とするのか思案中である。

【春】
さくら咲く今は死にたくない季節
横丁を曲がれば住所不定なり
花の下にっぽんじんは靴を脱ぐ
ともだちを数えて歩く花の下
ふっくらとうまいお墓の裏の蕗
小雀が飛ぶ位置さえも遥かなり
菜の花や柩の中はあの世にて
わたくしがすっぽり入るゴミ袋
赤ちゃんはまだしあわせでよく笑う
口笛がかすれる明日を思うとき
わたしより少し大きい河馬の顔
自転車に春の空気を入れてやる
鯉のぼりまたこの国が好きになる

【夏】
新しい朝の光を召し上がれ
あじさいに埋もれ小さな理髪店
天国はこんなものかな金魚鉢
坊さんのころもさやさや涼しそう
初夏というのに自転車が錆びている
いい人ばかりと錯覚しそういい天気
陽光を集めて猫の轢死体
削岩機むかしの俺のような音
ともだちも元気たのしい日が続く
夕暮れの電車の音を聞きに行く
目の前の人とかなしいほどの距離
霧が出て街は水族館になる

【秋】
いっこうに古くならないお月さま
恐竜が見たのと同じお月さま
樹のことば鳥のことばは難しい
樹は頭が良くて歩き回らない
仔犬ほど可愛くはない他人の子
いっしんにうごくめしくうひとのあご
脂身の甘さこの世は捨て難し
夕焼けの似合う歳にとなりにけり
秋が澄んで人の言葉がよくわかる
自画像を描けばブリキの古バケツ
ムーミンの絵葉書だれに出してやろ
酒という字が夕暮れにポッと点く

【冬】
この世とは冷たい雨の降るところ
さびしい日さむい日くらい日と続く
傷ついていないふりなら慣れている
あたたかい息をしている木の玩具
哀しみの年輪がある象の足
しあわせな人は静かにしてほしい
寂しくて水族館へまぎれ込む
海鳴りよ人は激しく老いてゆく
海に降る雪の如くに無力なり
雪の日の少し華やぐおとむらい
こめかみに銃口あてる日は来るか
行方不明という消え方も選択肢
トロ箱の蟹も死ぬのを待つばかり

(平成29年6月7日掲載)

8 Comments

  1. 返信
    細川 花門 2017年8月26日

    2015年9月に誌友になり、翌年2016年5月に本社句会に初参加。その折に 新家完司の名乗りは耳にしたが、お顔が判らない。
    同年10月の川柳塔まつりの懇親会の席で お名前とご尊顔が一致した。句会での作品に魅力を覚え、以来 川柳塔誌上だけで
    あるが 新家さんの「 追っかけ」を始めた。本日 今まで知り得なかった一面の完司さんの 50句に接し 改めて「惚れた」。
    「追っかけ」は 今後も続ける積りである。 花門

    • 返信
      新家完司 2017年8月26日

      こんにちは~。本社句会に初参加されてからまだ1年と3ヶ月ですか。何だか貫禄があって、すっかり超ベテランのムードですね。あっ、そういえば、「花門さんの呼名が分かりにくい」と、別嬪さんがおっしゃっていましたよ。「カモ~ン!」と明確に! よろしくお願いします。
      元気の出るコメント、サンキューべりマッチでした! 厳しい残暑お大切に~~!

  2. 返信
    麦乃 2017年6月8日

    大御所のご登場でワタクシのようなひょっ子が書かせていただくのもおこがましいのですが、こうして改めて作品を読ませていただくと、つくづく新家先生の愛されるお人柄を垣間見るような気がいたします。読後感のあたたかさユーモア丸み素晴らしいです。

    • 返信
      新家完司 2017年6月8日

      ありがとうございます。
      自分の句、自分では分からないので、皆さんから好評をえたのをピックアップしました。と、言っても悪評の中での僅かな好評ですが、、、。
      只今、岩美川柳会、投句締め切り間近です。

  3. 返信
    坂本加代 2017年6月7日

    「ミニ句集」完司さんの膨大な句の中から抜粋された50句は
    やはり光っていますね。
    お酒の句はあえて外してありますね。(他に譲って・・とか)
    50句をどのように分けられるのかと思っていましたら
    「春夏秋冬」というさわやかな分類でさすが~と思いました。
    また表紙の写真がとてもくっきりと趣もあっていいですね~
    句集で読んだ句ですがこのようにピックアップされてもう一度
    読むというのもいいですね。ありがとうございました。

    • 返信
      新家完司 2017年6月7日

      ありがとうございます。
      はい、最初は「酒」ばっかりで纏めようと思っていたのですが、
      井丸昌紀さんのが「酒」だったので、このようにしました。
      このほうがかえって良かったかと、昌紀さんに感謝です。
      写真は、ずいぶん前にブログにアップしたもので、
      皆さんから評判が良かったのをピックアップしました。
      横長だったのを、文節さんがうまくカットして下さって、感謝です。

  4. 返信
    大田かつら 2017年6月7日

    傷ついていないふりなら慣れている               完司  
    この句が強烈に迫ってきました、、あっけらかんのネアカだから、皆さんは全然傷なんかとは、縁遠い女だと思い込んでいるようです、、どんなにデリケートで傷つきやすいか⁉誰も信じてはくれませんトホホ、、かつらより

    • 返信
      新家完司 2017年6月7日

      はっはっは、デリケートで傷つきやすいですか。
      そうですね~。誰しも平然としていますが、こころは傷だらけです。
      川柳作家は、皆さん同じでしょう。そうでないと人情の機微は詠えません。
      川柳に取り組んでおられる皆さんが偉いのは、傷つけた人を恨むのではなく、
      さまざまな作品を生むことで、その傷を治していること。
      いわば、川柳による自然治癒でしょう。

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