題
「ビ ル」
平 宗星 選
| 夕焼けの中に廃墟のビルがあり | 横山閲治郎 | |
| ビル谷間スパイダーマンも通れまい | つれづれ | |
| 人絶えて墓石のようなビル残る | 柊無扇 | |
| 天下を取ったつもりでしょうか摩天楼 | なお | |
| 見下ろされ大阪城も口惜しがる | 吉岡修 | |
| お見知りおきをオシャレな野菜ビル育ち | 大島ともこ | |
| 不夜城に篭る戦士はもういない | 山本進 | |
| 横文字に強いカラスでビルが好き | 板垣孝志 | |
| 屋上の二人に夜が降ってくる | 米山明日歌 | |
| ご先祖の墓までビルに鎮座する | ホッと射て | |
| 夜鳴きそばビル高層に届かない | 澤井敏治 | |
| 天国にいちばん近い部屋に住む | こみち | |
| ビルの裏シーラカンスが飲んでいる | 森山盛桜 | |
| あのビルの右端辺りにパパがいる | ペースかめ | |
| 遊び場がすっかりビルに呑み込まれ | 葵 | |
| にんげんがいたのかビルに灯が点る | 新家完司 | |
| 炎天にビルの影すら煮え滾る | 素人 | |
| ビル谷間老舗女将の力こぶ | 内田志津子 | |
| 山鉾がビルに負けんと凛と立ち | 松岡篤 | |
| 愛憎がビルの谷間で息を継ぐ | 葱坊主 | |
| 何階建て以上をビルと呼びますか | 雨森茂喜 | |
| 工事終えボルト一本残ってる | 渡辺勇三 | |
| 朝夕にカラス出入りの秘密基地 | 渡辺勇三 | |
| 新世紀ビルがだんだん背伸びする | 寺川弘一 | |
| 見上げればバベルの塔が聳え立つ | 小泉重夫 | |
| 照り返しビルで火傷の痕がある | 辻内次根 | |
| 解体のビルに別れの朝が来る | ちゃくし | |
| 殺風景なビルの谷間に虹がたつ | 柳田かおる | |
| ビルから見るなんと我が家の小さいこと | 山本昌乃 | |
| 朝焼けのビルから魔法解いてゆく | 青砥和子 | |
| ビル街に働く場所が見当たらぬ | 石森あやみ | |
| その先はイカロスとなるビルディング | 怜 | |
| 佳 作 | 満月がビルの谷間で動けない | 麦乃 |
| 崩落はしない記憶のなかのビル | 雨径 | |
| 鈍感なビルはゴジラが踏みつぶす | 十六夜 | |
| ガリバーが跨げないかもしれぬビル | 西山竹里 | |
| ペンギンも甚平鮫も泳ぐビル | 丹下凱夫 | |
| 人の句 | 少しずつビルに囓られてゆく空 | 雨径 |
| 地の句 | あの世でも白木の箱はビルの中 | 三好光明 |
| 天の句 | 残されて一番星になった窓 | 西沢葉火 |
題
「ビ ル」
栃尾 奏子 選
| 直角にビル街の夜が明けていく | かきくけ子 | |
| あちこちにバベルの塔が建ち始め | 柊無扇 | |
| ビルらしく黙って立っていましょうね | 乙川初音 | |
| 高層のビルが隣りを威嚇する | 柳谷益弘 | |
| 天下を取ったつもりでしょうか摩天楼 | なお | |
| 頂点の乾きを知ったノッポビル | 武本碧 | |
| ビルになる夢温めている積み木 | 橋倉久美子 | |
| ビル街を遠目に実家古きまま | 山川守 | |
| 信長に見せてあげたいあんなビル | 絹田あさ | |
| また一つ風景変えてビルが建つ | 浮世っ子 | |
| 酸欠のビルに優しい雨が降る | 平井美智子 | |
| ビル風は景気不景気知っている | 白鳥象堂 | |
| ビル風に持って行かれた片思い | こみち | |
| 去年まで見えた花火を消したビル | 心咲 | |
| おじいさんもう止めなはれボディービル | 水野黒兎 | |
| 大阪城ビルの間にちらり見え | 上平祥 | |
| 非正規は見たこともない本社ビル | 吉崎柳歩 | |
| カードキービルへお盆の墓参り | 谷口修平 | |
| 世の中のどんなビルにもある二階 | 西山竹里 | |
| にんげんがいたのかビルに灯が点る | 新家完司 | |
| 我が町でいちばん高い五階建て | 新家完司 | |
| 通り雨グラデーションのビルになる | 田村ひろ子 | |
| ビル群の夜景を映すサクソフォン | たごまる子 | |
| ビルの窓ラジオ体操午後三時 | 春川秋男 | |
| 屋上に植物園を載せたビル | 坂本加代 | |
| 肉体美求めて励むボデイビル | 田原勝弘 | |
| くちビルがひとつ描かれたお品書き | 斉尾くにこ | |
| 支社勤務近くて遠い本社ビル | 門田吉雄 | |
| ペンギンも甚平鮫も泳ぐビル | 丹下凱夫 | |
| 震度5によろめいているビルの群れ | 光畑勝弘 | |
| 残業のビルの窓から遠花火 | 野平光太郎 | |
| 誇らしく背丈を競う都市のビル | 野平光太郎 | |
| 佳 作 | ビルだってため息をつく夜十時 | 汐海岬 |
| またビルが建ちます世界狭くして | 海賊芳山 | |
| 連休のビルはあくびを噛み殺し | 光畑勝弘 | |
| ビル風の孤独へヒール響かせる | 真島美智子 | |
| 押しなれた木のドアがある雑居ビル | 怜 | |
| 人の句 | 幽霊も神様もいる雑居ビル | 勢藤潤 |
| 地の句 | その先はイカロスとなるビルディング | 怜 |
| 天の句 | かくれんぼしましょうあべのハルカスで | 丹下凱夫 |