題
「 年 」
青砥たかこ 選
| 徒らに生き年輪の見えぬ顔 | かきくけ子 | |
| アンチエイジングピンクの服を着ています | 絹田あさ | |
| お迎えの年限とうに二日酔 | 山川守 | |
| 帳尻を合わせ穴掘る年度末 | 前川真 | |
| 年寄りと笑わば笑えまだ助走 | 大島ともこ | |
| 誤解したままの夫婦で五十年 | 沢田正司 | |
| おとぼけも年季が入る老夫婦 | 十六夜 | |
| たしか俺金の草鞋を履いた筈 | ひろパパ | |
| 半分過ぎてもう錆びている今年 | 岸田万彩 | |
| 忘れてもいい年ですと許される | 田村ひろ子 | |
| ぼんやりと定年ふいに出るクシャミ | 田村ひろ子 | |
| 年金日百点取った孫が来る | 中筋弘充 | |
| そろそろと和暦身辺整理する | ペースかめ | |
| 年上の部下に敬語を欠かさない | 光畑勝弘 | |
| 年寄りの赤紙届く七十五 | 松長一歩 | |
| 来年の約束はせぬチューリップ | 橋倉久美子 | |
| 年金の天引き額と詰め将棋 | 平尾定昭 | |
| 惜しまれて逝くには年を取りすぎた | あそか | |
| モリカケの解明年を重ねても | フーマー | |
| 七段の十年前は五つだよ | はなぶさ | |
| まいったなスマホはっきり年当てる | 稲垣康江 | |
| 夫婦独楽ぶつかりながら50年 | 上山堅坊 | |
| 寄る年が速度早めて攻めてくる | 岸井ふさゑ | |
| 年賀状やめたら干支が分からない | たごまる子 | |
| 年の功縄文杉の佇まい | ひでき | |
| 抵抗もしないで年寄りになった | 心咲 | |
| もぎたての檸檬も年を食っちゃった | 心咲 | |
| ときめく恋はもう心臓に悪い年 | 澁谷さくら | |
| 一年は短く一日は長い | まさと | |
| 地震来る咄嗟に動けない年に | やひろ | |
| 中年期 見えぬところに角ができ | 汐海岬 | |
| きれいなお肌年を聞いてもいいですか | 彩古 | |
| 佳 作 | 年を経て硬さを増した耳の骨 | 板垣孝志 |
| まだまだと十年旅券取る卒寿 | 白鳥象堂 | |
| 辞めたって返してくれぬ年会費 | 吉崎柳歩 | |
| 寂しくて一年中を渦の中 | 平尾定昭 | |
| 過ぎましたあなたのいない一年が | 居谷真理子 | |
| 人の句 | 晩年という貧相な海に出る | 雨径 |
| 地の句 | 年収に聞き耳たてるクラス会 | 福村まこと |
| 天の句 | 年ごとに雨の匂いが深くなる | 平井美智子 |
題
「 年 」
石橋 芳山 選
| 取説は年寄り向きに出来てない | 荘子隆 | |
| いい年していい年ってのなんだろう | あーさまま | |
| 晩年という貧相な海に出る | 雨径 | |
| アンチエイジングピンクの服を着ています | 絹田あさ | |
| パンドラの箱から飛んで出た月日 | 武本碧 | |
| 青と赤うまく混ざらぬ更年期 | 米山明日歌 | |
| 年齢を体重計が持ち上げる | 山田こいし | |
| 老人の仲間何歳からだろう | 葵 | |
| たしか俺金の草鞋を履いた筈 | ひろパパ | |
| 半分過ぎてもう錆びている今年 | 岸田万彩 | |
| 壺の中に今年を詰めて熟させる | 水野黒兎 | |
| 右左丈の合わない閏年 | 西沢葉火 | |
| 一年の空論喉に吐けぬ泥 | 原徳利 | |
| 辞めたって返してくれぬ年会費 | 吉崎柳歩 | |
| 記念樹のグーチョキパーの枝分かれ | 岩根彰子 | |
| 忘れてもいい年ですと許される | 田村ひろ子 | |
| 年齢を聞いても薔薇は答えない | 尾崎良仁 | |
| 少年は電池切れても笑ってる | 尾崎良仁 | |
| 父の忌へ父を越せないダンディズム | 美馬りゅうこ | |
| ワコールでピリオド打ってみるボディ | 美馬りゅうこ | |
| 年ごとに雨の匂いが深くなる | 平井美智子 | |
| 年輪に沁み込んでいる旨い酒 | 新家完司 | |
| 年下の男もこんなおじいさん | 橋倉久美子 | |
| 来年の約束はせぬチューリップ | 橋倉久美子 | |
| 記録的加齢でしたとこの一年 | 青砥和子 | |
| 物置きにぎゅうぎゅう詰めの五年間 | 藤井智史 | |
| うちの子ものび太の年を越えていく | 加藤当白 | |
| 年の差を補助輪なしで見せつける | ひでき | |
| 半世紀友とついた差何だった | 中内孚彦 | |
| 目が回るくらいに歳をとってゆく | 丹下凱夫 | |
| 年表を突っ切ってゆく青い馬 | 怜 | |
| ディンクスが崩す人口ピラミッド | 水たまり | |
| 佳 作 | Yの手がピンと上がらぬヤングマン | 米山明日歌 |
| 年齢を詐称しているミニトマト | 平井美智子 | |
| 老いるため年を重ねたわけじゃない | たまき | |
| うるう年だからあなたを愛せない | 斎藤秀雄 | |
| 地軸へと刻む私の誕生日 | くみくみ | |
| 人の句 | 少年のへそから下がさくらの樹 | 斎藤秀雄 |
| 地の句 | ランドルト環から一年を覗く | 怜 |
| 天の句 | 年齢は不詳怪魚になって行く | 森山盛桜 |