本社句会秀句2021

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川柳塔 2021年12月本社誌上句会秀句
兼題 「焦 る」 米澤 俶子 選
人の句 ほろほろと残り時間が減ってゆく 平井美智子
地の句 夜何度電話かけても出ない母 髙橋敬子
天の句 喪服だけ持って黒靴置いて来た 冨永恭子
兼題 「ちらちら」 岸本 宏章 選
人の句 おかげんはいかがお噂ちらちらと 安土理恵
地の句 ちらちらと女は女を値踏みする 清水英旺
天の句 神さまは助けてくれないが見てる 髙瀨霜石
兼題 「こりごり」 森松まつお 選
人の句 朝寝坊はこりごり眉を描き忘れ 岡田恵子
地の句 こりごりだ風呂で寝るのはもう止そう 中筋弘充
天の句 N響に誘ったイビキかく男 居谷真理子
兼題 「驚 く」 句 ノ 一 選
人の句 改心をしてご先祖を驚かす 田辺与志魚
地の句 驚いて貰える内に旅立とう 新家完司
天の句 Nitoryuやがて英語の辞書に載る 渡辺たかき
兼題 「過 去」 小島 蘭幸 選
人の句 過去を消すと私ではなくなってしまう 中岡千代美
地の句 想い出という駅に佇つ旅人よ 木本朱夏
天の句 再会の涙に過去が許される 岸桂子
月間賞  岸桂子
川柳塔 2021年11月本社誌上句会秀句
兼題 「ペース」 西田美恵子 選
人の句 丸くなりゆるいペースに慣れてきた 坂本加代
地の句 蓼を食うペースと臍を噬むテンポ 斉尾くにこ
天の句 おはようと言えばご飯が炊きあがる 髙瀨霜石
兼題 「木製品」 矢倉 五月 選
人の句 法隆寺みずほの国の木の遺産 古今堂蕉子
地の句 天才に正座をさせる将棋盤 岸田万彩
天の句 木の匙の温みで重湯から粥に 板垣孝志
兼題 「攻める」 藤村 亜成 選
人の句 攻めてくる老いに一献進ぜよう 居谷真理子
地の句 晩秋の夕日わたしの城攻める 中前幸子
天の句 哀しみが靴の底から攻めてくる 稲角優子  
兼題 「 前 」 板垣 孝志 選
人の句 以前より無口手強くなってきた 上野多惠子
地の句 津波前津波のあとも青い海 北野哲男
天の句 淋しい方の足をすこうし前へ出す 平井美智子
兼題 「住所または場所」 新家 完司 選
人の句 アフガンに住むにはヒゲが薄すぎる 岸田万彩
地の句 永住を希望あなたの腕の中 栃尾奏子
天の句 大字小字ヤモリも共に棲むところ 安土理恵
月間賞  安土理恵
川柳塔 2021年10月(第27回川柳塔まつり)本社誌上句会秀句
兼題 「嬉しい」 江島谷勝弘 選
人の句 嬉しいとゴーンと胸の鐘が鳴る 鈴木かこ
地の句 お湯割りを少し濃くした子の帰省 安藤敏彦
天の句 母さんのエールでっかい握り飯 吾郷天遊
兼題 「選 ぶ」 内藤 憲彦 選
人の句 お金より顔よりやはり人格者 片岡加代
地の句 私も総理を選びたいのです 奥時雄
天の句 もう一花咲かせる種を選っている 山田順啓
兼題 「ヒント」 髙瀨 霜石 選
人の句 迷ったら昭和の夕陽まで戻る 安藤敏彦
地の句 砂時計のくびれがヒントくれました 山本昌乃
天の句 助けにはならぬが身の上を語る 田中ゆみ子
兼題 「 橋 」 木本 朱夏 選
人の句 流された橋に政治の嘘がある 三好専平
地の句 丸木橋吊り橋 俺について来い 小島蘭幸
天の句 石橋を渡り生涯名は成さず 近藤勝正
兼題 「呼 ぶ」 美馬りゅうこ 選
人の句 口笛を吹くと昭和がやってくる 辻内次根
地の句 おーい雲普通の雨にしませんか 安藤敏彦
天の句 百歳へ一直線の名を呼ばれ 森中惠美子
兼題 「 家 」 小島 蘭幸 選
人の句 不器用な俺が自作のログハウス 石橋芳山
地の句 モデルハウスに写る理想の家族 村上和子
天の句 一軒家はさびしいマンションは孤独 みぎわはな
月間賞  みぎわはな
川柳塔 2021年9月本社誌上句会秀句
兼題 「乱れる」 川﨑ひかり 選
人の句 髪乱し手紙つかんで追った母 鈴木栄子
地の句 縦糸が乱れて信念が揺れる 笹重耕三
天の句 バイオリズム乱れたままに夏が逝く 木本朱夏
兼題 「プ ロ」 大久保眞澄 選
人の句 百グラムぴたりと乗せて「毎度あり」 島田明美
地の句 校長は八百人の名を覚え 居谷真理子
天の句 締め切りが素知らぬ顔で立っている 川本真理子
兼題 「 雨 」 西村 哲夫 選
人の句 雨宿りつい居酒屋の軒の下 大久保眞澄
地の句 終日の雨今日はだあれも笑わない 山田葉子
天の句 片想い僕を詩人に変える雨 栃尾奏子
兼題 「すんなり」 長谷川酔月 選
人の句 すんなりと握手が出来ぬ戦後処理 笹重耕三
地の句 抗えぬ引力君に堕ちていく 中村惠
天の句 アスパラの青は少女の日の匂い 木本朱夏
兼題 「最 高」 小島 蘭幸 選
人の句 最高の笑顔をかえすプロポーズ 惠利菊江
地の句 一汁一菜を合掌で食す 西村哲夫
天の句 妻という最高の椅子用意する 藤井智史
月間賞  藤井智史
川柳塔 2021年8月本社誌上句会秀句
兼題 「ラスト」 齋藤さくら 選
人の句 原爆に残るドームの血の叫び 藤澤照代
地の句 人生のラスト見送る野辺の花 吉村めぐみ
天の句 文庫本一千冊を処分する 江島谷勝弘
兼題 「すいすい」 萩原狸月 選
人の句 夕焼けを背に乗せて来る赤トンボ 藤澤照代
地の句 すいすいと人波を縫う子の背中 阪井恵子
天の句 札束がすいすい通る針の穴 平井美智子
兼題 「多 少」 稲見則彦 選
人の句 人生のスタート僅差だったはず 木田比呂朗
地の句 抜け目なく多少大きい方を取る 鴨田昭紀
天の句 けっきょくは人生あみだくじらしい 髙瀨霜石
兼題 「 銀 」 山崎夫美子 選
人の句 寝たきりの母とつながる銀の鈴 渡辺富子
地の句 トマトですそうです僕の銀行名 吉村久仁雄
天の句 手の届く銀河よ父の肩車   米澤俶子
兼題 「個 性」 新家完司 選
人の句 ぼくはチェロきみは第一ヴァイオリン 髙瀨霜石
地の句 絶対に2回検算致します 内藤憲彦
天の句 カルピスとマヨネーズだけあれば良し 上田ひとみ
月間賞  上田ひとみ
川柳塔 2021年路郎忌本社誌上句会秀句
兼題 「うるおう」 糀谷 和郎 選
人の句 うるおいが欲しくて路郎句集読む 西出楓楽
地の句 風と居るかけがえのないこの時間 上田ひとみ
天の句 忙中閑ゆっくりお茶を立てている 黒田茂代
兼題 「 嘘 」 金子美千代 選
人の句 始まりはほんの小さな嘘だった 木田比呂朗
地の句 騙されてあげよう君が好きだから 石田ひろ子
天の句 本当は泣きたかったし辛かった 上田ひとみ
兼題 「生きる」 村上 玄也 選
人の句 たくましく生きたしるしの火炎土器 岸田万彩
地の句 存分に生きた顔あり棺の中 長髙俊雄
天の句 生きている実感爪を切る髭を剃る 田中ゆみ子
兼題 「うかうか」 西 美和子 選
人の句 飛び石を飛べないなんて忘れてた 山田葉子
地の句 戦力外通告が届くこの世から 髙瀨霜石
天の句 紫陽花寺であじさいになりました 森中惠美子
兼題 「無 理」 小島 蘭幸 選
人の句 すこし無理しようかコロナ禍のレシピ 山岡冨美子
地の句 呆けと呆け夫婦漫才にもならず 三浦強一
天の句 カモメにも橅にもなれず本を読む 居谷真理子
月間賞  居谷真理子
川柳塔 2021年6月本社誌上句会秀句
兼題 「泣 く」 冨永 恭子 選
人の句 僕が居るだから泣いても良いんだよ 栃尾奏子
地の句 よう泣いたもう笑うしかない余生 半田知弘
天の句 泣きながら惰性の中で米を研ぐ 小山惠美子
兼題 「急 ぐ」 古久保和子 選
人の句 突っ走る若さに句読点がない 藤澤照代
地の句 急がねばわたしの旬が消えてゆく 沢田正司
天の句 結論を急くから海が時化て来る 吉村久仁雄
兼題 「ムード」 竹村紀の治 選
人の句 全身に音符を浴びているホール 矢倉五月
地の句 藤棚の下で女優になってみる 島田明美
天の句 青い空行ってらっしゃい聞こえそう 山田葉子
兼題 「 泡 」 植竹 団扇 選
人の句 手洗いの軍手が誇る黒い泡 瀬島流れ星
地の句 泡盛で語り尽くせぬ沖縄忌 田中ゆみ子
天の句 「シャボン玉」野口雨情の親ごころ 大内朝子
兼題 「勇 気」 小島 蘭幸 選
人の句 わたくしの勇気の主成分は酒 藤井智史
地の句 人間に戻る勇気はありません 中川千都子
天の句 夢が湧く夕陽 勇気の出る朝日 上山堅坊
月間賞  上山堅坊
川柳塔 2021年5月本社誌上句会秀句
兼題 「覗 く」 川本真理子 選
人の句 顔色で心覗いてくれた母 大内朝子
地の句 火吹竹覗いて子等の小宇宙 津守柳伸
天の句 人間のロマン覗いた花筏 大前安子
兼題 「 腕 」 山田 耕治 選
人の句 抱きしめて抱きしめられて泣きました 島田明美
地の句 財産はないが昭和の力瘤 竹村紀の治
天の句 組んだ腕無口な父の答え待つ 加藤江里子
兼題 「軽 い」 木田比呂朗 選
人の句 肩書きが取れた名刺の自然体 笹重耕三
地の句 さらさらと茶漬けで済ます旅帰り 木本朱夏
天の句 駅一つ歩いて今日も身が軽い 石田隆彦
兼題 「ややこしい」 くんじろう 選
人の句 助成金頂くまでのお手続き 竹村紀の治
地の句 時間差で十五種類の薬飲む 清水久美子
天の句 たかが茶でございませんかお家元 居谷真理子
兼題 「奇 跡」 新家 完司 選
人の句 あの人の前で切れたの靴の紐 みぎわはな
地の句 ミジンコで生まれなかったのが奇跡 木本朱夏
天の句 恐山ビートルズすら降りてくる 稲見則彦
月間賞 稲見則彦
川柳塔 2021年4月本社誌上句会秀句
兼題 「空 気」 柳田かおる 選
人の句 酸欠の蛍よ八日目の蝉よ 永見心咲
地の句 胸いっぱい香り吸い込む新刊書 稲角優子
天の句 大気汚染地球は今や瀕死です 黒田茂代
兼題 「アウト」 松原 寿子 選
人の句 粘り抜くここでアウトになるものか 坂裕之
地の句 シャットアウトしたいコロナという魔物 大久保眞澄
天の句 またアウトへこたれへんで明日がある 山本昌代
兼題 「忘れる」 仁部 四郎 選
人の句 忘れたら進軍ラッパ鳴りますよ 居谷真理子
地の句 忘れたと記憶にないの大きな差 太田省三
天の句 夫婦坂忘れられないあの辺り 太田扶美代
兼題 「ぺらぺら」 月波 与生 選
人の句 両親を騙したことが一度ある 榎本日の出
地の句 早期退職募るはんぺんはぺらぺら 永見心咲
天の句 一枚の紙に斬られた過去がある 木本朱夏
兼題 「立 場」 小島 蘭幸 選
人の句 静止画を抱き反核の列にいる 田辺与志魚
地の句 スタンバイしている三色ボールペン 木本朱夏
天の句 肩書きを取ればやさしい人でした 斉尾くにこ
月間賞 斉尾くにこ
第九回 春の川柳塔まつり誌上大会特選句
課題 「 波 」 野沢 省悟 選
特選句 一尋の波を褥として生きる 平井美智子
特選句 波打ち際に朱いポストが立っている 嶺岸柳舟
課題 「 波 」 平井美智子 選
特選句 一の波二の波父と母である 太田のりこ
特選句 波風を立てずに生きて顔がない 西谷公造
課題 「 飾 る」 弘兼 秀子 選
特選句 春の絵で飾るおひとりさまの壁 木本朱夏
特選句 幸せな振りをしている飾り窓 田中俊子
課題 「 飾 る」 竹治ちかし 選
特選句 林住期見栄も虚飾もない暮らし 雪本珠子
特選句 修飾語とるとのっぺらぼうのボク 永井松柏
  (自由吟) 芳賀 博子 選
特選句 干し大根祈りになってゆく途中 河村啓子
特選句 おみくじは中吉ワクチンの順を待つ 山本希久子
  (自由吟) 小島 蘭幸 選
特選句 海が凪ぐ君が笑っただけなのに 糀谷和郎
特選句 転がっていった淋しい音だった 居谷真理子
川柳塔 2021年2月本社誌上句会秀句
兼題 「ゆるい」 髙杉  力 選
人の句 義父からの結び目ゆるい荷物つく 山本加お里
地の句 ゆるい目にきっちり締めておきました 谷口義
天の句 脱衣所に落ちていたのはぼくのネジ 髙瀨霜石
兼題 「ランク」 工藤千代子 選
人の句 訳ありの方へわたしは分けられる 辻内次根
地の句 副のつく役が僕には似合ってる 吉村久仁雄
天の句 ランキング上が目指せる二位が好き 齋藤奈津子
兼題 「 隠 す」 北野 哲男 選
人の句 喝采の中に隠れていた嫉妬 生田頼夫
地の句 元気だよそれだけ言った電話口 上田ひとみ
天の句 隠してもオーラでてるよお幸せ 近兼敦子
兼題 「わがまま」 米山明日歌 選
人の句 わがままを三百席手に入れる 中前棋人
地の句 人間が真ん真ん中という地球 辻内次根
天の句 不等辺三角形のまま生きる 髙瀨霜石
兼題 「 愉 快 」 新家 完司 選
人の句 パレードに参加テキーラぶら下げて 村田博
地の句 好きですと上手に書けたペンを買う 上田 和宏
天の句 ふたりとも同じくらいの記憶力 上田ひとみ
月間賞  上田ひとみ
川柳塔 2021年1月本社誌上句会秀句
兼題 「お洒落」 斉尾くにこ 選
人の句 匿名という名でポンと寄附しはる 太田としお
地の句 服に合わせて二十四色あるマスク 村上和子
天の句 断捨離をしました生き方のお洒落 荻野浩子
兼題 「ぽろぽろ」 杉野 羅天 選
人の句 舞台裏のピエロの涙君知るや 髙杉力
地の句 鳥取の砂像は北風へ向かう 斉尾くにこ
天の句 こぼれ出た言葉散らかり長い冬 冨永恭子
兼題 「 数 」 三浦 強一 選
人の句 太陽を貰う一人に一つずつ 平井美智子
地の句 皺の数少し笑いが過ぎたよう 伊藤玲峰
天の句 あと一つ折れば飛び立つ千羽鶴 西谷公造
兼題 「キュン」 岩田 明子 選
人の句 一本のバラとワインとラブレター 植野繁子
地の句 ラストダンス僕でホントにいいですか 北川ヤギエ
天の句 寒いねえ逢いたいねえと来たメール 美馬りゅうこ
兼題 「安 心」 小島 蘭幸 選
人の句 陽だまりがあった 笑い声があった 髙瀨霜石
地の句 辞世の句できたお次は恋を詠む 居谷真理子
天の句 この服を着ると安心するのです 谷口義
月間賞 谷口義