題
「 白 」
くんじろう 選
白い息ぐらいは見せて 駆けて来い | 細川花門 | |
沈丁花の闇 逢いたい水たまり | 米山明日歌 | |
白旗は我が家の居間の必需品 | 三好光明 | |
再生紙は開き直った白である | 千代美 | |
白状するとモスラを食ったことがある | 月波与生 | |
踊り場で紋白蝶になる手帖 | 月波与生 | |
ゾワゾワと白に犯されゆく二月 | 平井美智子 | |
大根の形のままで妥協する | 森山盛桜 | |
白を足す呼吸が楽になるように | 橋倉久美子 | |
三日月のうっすら透けて見える白 | 青砥たかこ | |
雪雪雪雪雪雪いやになる | 新家完司 | |
降伏は巻いた晒に聞いてから | 光畑勝弘 | |
20パー増量白絵の具チューブ | 雨森茂喜 | |
雪原を大蛇のごとくうねる川 | 宮尾美明 | |
婚約の指輪白つめ草で編む | 右田俊郎 | |
歳月や渚に珊瑚礁の砂 | 辻内次根 | |
クレゾールの移り香遠く春の白 | 辻内次根 | |
白旗の真ん中に建つ精子の碑 | 福村まこと | |
いもうとは白夜に眠る未決囚 | 福村まこと | |
遡上して過去を漂白するのです | 柴田比呂志 | |
雑音をきれいに流す白雨かな | 根木秋亜 | |
白夜には白いライオンからLINE | 斉尾くにこ | |
手筈どうり二泊三日の白亜紀へ | 田口和代 | |
純白は無慈悲に処刑された壁 | 加藤当白 | |
ルビコンを渡る白には戻れない | うちだあつこ | |
滑らかな白磁は白い血を流す | 岸井ふさゑ | |
白馬が喉元過ぎて暴れ出す | 蕎麦酔人 | |
白き手の報復メスは使わない | まさと | |
余罪などございませんと春の雪 | 美馬りゅうこ | |
町長がのこしたあぶりだしの遺書 | 斎藤秀雄 | |
遺すのは白い指紋とため息と | 水たまり | |
空欄を横切る一匹の白蛇 | 怜 | |
佳 作 | アルテミス型の乳房を好いている | 龍せん |
腹筋がやっと割れたわ白木蓮 | 岩根彰子 | |
洗濯もせねばならない雪女 | 吉崎柳歩 | |
後ろめたい白ときどきどきどきする | 青砥和子 | |
搾乳機動けぬ牛の哀しい目 | 城崎れい | |
人の句 | 本部ですどうぞ 白骨ですどうぞ | 加藤当白 |
地の句 | 「 ! 、 。」 | 西沢葉火 |
天の句 | 豪雪さ生理が七日こないとさ | 尾崎良仁 |
題
「 白 」
居谷真理子 選
山頂で見れば冠雪薄汚れ | かきくけ子 | |
日章旗白地に赤の黄金比 | 颯来 | |
白黒は好きにどうぞと風見鶏 | 大島ともこ | |
白い飯たらふく喰えてまだ不満 | 竹中正幸 | |
真っ白なシャツから透ける腹の色 | 汐海岬 | |
白線を5ミリ越えたと叫ぶ笛 | 前川真 | |
再生紙は開き直った白である | 千代美 | |
よく泣いた 白が真白に見えた頃 | 川本真理子 | |
空白の時間を生きる千鳥足 | 岡野満 | |
魂を漂白してる日曜日 | 十六夜 | |
白鵬の白が段々薄汚れ | 岸田万彩 | |
大根の形のままで妥協する | 森山盛桜 | |
迷彩色の手を白手袋で隠す | 北田のりこ | |
頷いている包帯の白いこと | まろこ | |
母はいま眠り続ける白い部屋 | 上原稔 | |
白いのがいっぱい降ってきて寒い | 新家完司 | |
雪のいろ白で良かった街に野に | 小林祥司 | |
白か黒融通きかぬ男ども | くみ | |
洗濯もせねばならない雪女 | 吉崎柳歩 | |
他の色は排除したから白い色 | 寺川弘一 | |
ホワイトアウト神の試練が終わらない | 笹倉良一 | |
白無垢が満艦飾で里帰り | 葱坊主 | |
夜の底ふたつ絡まる白い息 | 石川柳寿 | |
梅真白隣と比べたりしない | 紅梅 | |
白髪がちらほら老いが迷い込む | 山下凱柳 | |
白旗の裏にわずかに残る色 | 西山竹里 | |
看病の窓に差し込む白い朝 | 野平光太郎 | |
漂白で働く辛さまで取れぬ | 徳重美恵子 | |
ドラッグで白衣着ているただの人 | 井戸野蛙 | |
大好きな白が他人の顔をする | 柳田かおる | |
白菊に埋もれ弔辞の品定め | あそか | |
雪の色混ぜてこの世を淡くする | 水たまり | |
佳 作 | 雪よ雪解けるな汚染目を覚ます | 澤井敏治 |
体幹を鍛え白旗高く揚げ | アズスン安須 | |
本部ですどうぞ 白骨ですどうぞ | 加藤当白 | |
証人がいないと僕は白でない | 平尾定昭 | |
大根がアナタ好みになりたがる | わこう | |
人の句 | 一点のシミもゆるさぬ白の罪 | 澁谷さくら |
地の句 | 草食の男は見ない白日夢 | 伊藤良一 |
天の句 | 白い手のままの神など信じない | 澁谷さくら |
「 ! 、 。」
「白」という題があって「川柳」と認められるギリギリの作品だと個人的に思います。五七五の枠に収めるのも無理がありますし。
でも、こういうアイディア勝負の一発芸は、無理に川柳という枠に収めることもないんじゃないでしょうか。
草野心平の「冬眠 ●」のように、詩として認めるべき作品ではないでしょうか。
白
西沢葉火
「 ! 、 。」
素晴らしいと思いますけど。
ルナールにも「蛇――ながすぎる」なんてのがありましたね(『博物誌』)。