澤井敏治ミニ句集

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澤井敏治ミニ句集明日を生きる 抜粋」
(朝日なにわ柳壇百句集の抜粋50句)

澤井敏治 (さわいとしはる)
テモテ川柳会・川柳塔さかい所属
川柳塔社同人

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はじめに  
 新家完司さんのブログの大ファンで、就寝前の日課として毎日読ませていただいている。昨2016年4月29日付にて「世界初の毎週web句会」を知り、所属する聖テモテ教会から沖縄大学に進学した青年への応援の気持ちも込めて、第3回から続けている。
 今回のミニ句集もそうだ。5月19付のブログでこの企画を知った。私は今年の初め、朝日なにわ柳壇百句集「明日を生きる」の上梓したところ、川柳塔の柳界展望に、3月号では私家版発刊のことを、4月号では朝日新聞大阪版に掲載されたことを紹介していただいた。お陰様であっという間に手持ちはなくなり、増刷を気にしながら逡巡している矢先のことであった。早速、百句集の抜粋という50句集でも、この企画にマッチしたものだろうかと、森山文切さんにmailしたところ、ご了解のre-mailを頂戴し、厚かましくも参加させていただいた。

平成29年5月25日  澤井敏治 

本句集データ
 多寡が百句集であるが、朝日なにわ柳壇は毎週約1,500句の投句から入選は30句という厳選で聞こえる位置づけである。
 「百句集支えてくれた没千句」(小島蘭幸選)は川柳塔誌5月号の「川柳塔」に掲載されたが、7年半の90カ月に投句したのは、実際は1,000句どころではない。そのほかには、自選もれの没句も山とあるし、初入選までの全没の句も忘れてはならない。改めて「支えてくれた没句」に敬意を払わねばならないと、つくづく実感している。

本句集掲載句数    50句
 百句からの選別:朝日なにわ柳壇の選者は番傘川柳本社主幹の田中新一先生と川柳塔社相談役の西出楓楽先生である。どの句にも愛着が残っている。そこで、両先生から頂戴した序文に取り上げていただいた句を中心に、謹呈した諸先輩からの鑑賞文に評価していただいた句を参考にして、50句に絞った。

略歴
昭和12年9月6日 大阪府生まれ
平成19年6月   堺聖テモテ教会川柳会に入る
平成20年6月   朝日なにわ柳壇に投稿開始
平成21年3月   朝日なにわ柳壇 初入選(3.7)
10月  川柳塔社誌友
11月  堺川柳会入会(現:川柳塔さかい)
平成22年5月   朝日カルチャーセンター「楽しめる川柳」講座入講
平成23年12月     川柳塔社同人
平成28年8月   朝日なにわ柳壇初入選百句達成(8.20)

平成21年~25年(27句/入選46句から)
叩いてもコブは出来たが毛は生えず
糸切れてからくりの鬼笑ってた
千三百年 歴史を誇る鹿の声
冴え渡る北斗を杓に酒掬う
命絶つ無言の叫び誰が聞く
正直は最後に勝つと信じたい
立秋に「わだつみのこえ」読み返す
円高がどうあれ我が家おでん煮る
我が人生いつも走って来たような
身の程を知って自分の殻みがく
一隅を照らしわくわくしていたい
痛い目に合っても減らぬ酒の量
願うたび努力足らぬと鈴が鳴る
冤罪が晴れても時は戻らない
素っ気ない顔に包んでいる本気
ただ酒を飲めば心を盗まれる      
葱刻むリズムに荒波の予感
ばあちゃんの鼻の脂はよう効いた
買い物をする妻荷物持つ夫
ゴキブリが三億年を自慢する
思い出の景色に妻がいつも居る
数のみに甘えてならぬ民主主義
ソフリエに泣き所あり膝と腰
シャボン玉弾けて虹が降り注ぐ
母の手のコップに添える介護の手
案山子にも着せてやりやい防護服
もし妻がと思えば響く闇の音

平成26年~28年(23句/入選54句から)
お節介とさえも気づかぬお人よし

開店より派手なチラシの店仕舞い
ぐんぐんと体重増やす妻元気
信号の青を鵜呑みにした不覚      
内緒だが宇宙人にはへそが無い
叱るうちが華だと母の目に涙
暑いの寒いのぼやく日本に四季がある
何してもいつも気の合う飲み仲間
出世なし定年もなし主婦の労
ちちんぷい巧みに子供担ぐ母
おおきにと勿体ないで生きた母  
身を削ることしか知らぬ母だった
ありがとう暗いうちから母の音
少子化に逆立ちをするピラミッド
生き様の幅を拡げてくれる無駄
気ままでもいいよ母さん元気なら
飲みすぎの朝餉に妻のしじみ汁
気分よく飲んでいるのに出る茶漬け
ウルマンの青春抱いて八十路行く
妻のメモ持って番菜買いに行く
真実を抱いて耐えてるサンゴ礁
あす生きる元気探しにするおしゃれ
情熱がアルプス席で塩を噴く

あとがきに代えて(平成28年12月)

①序:八十路の青春(抜粋)  川柳塔社相談役  西出楓楽 
 澤井敏治さん、朝日なにわ柳壇入選百句集『明日を生きる』ご上梓おめでとうございます。
 敏治さんと面識を得たのは柿花和夫さんの紹介で平成22年、長江時子さんと私が講師を務める朝日カルチャーセンター「楽しめる川柳」へ参加された時からである。敏治さんは初っ端からの合格点という成績であった。それまでの約3年ご近所の教会で、柿花和夫さんの指導を受けてこられたことと、持ち前のセンスと努力によるものだろう。
 川柳の面白さの一つにキャリアや実力によるランク付けがないことがある。講座でも私が困った時は、助言を頂いている有様なのである。
「カルチャーで教えることは学ぶこと」(楓楽)
 敏治さんは平成27年8月『エイジシュート77』のタイトルで、それまでの入選句77句を手作りの冊子に纏めておられる。その後の100句までの残り23句を一年間で達成されたことは、厳選で聞こえる「朝日なにわ柳壇」では、異例のスピードと言えるだろう。
 「朝日なにわ柳壇」は出された題からイメージを膨らませて作句する。従って必ずしも作者の身辺を詠んだものでなく、フィクションの句も含まれる。けれど、自ずと生き様や環境は滲み出てくるものである。その中での出色の出来はやはりお母さんであろう。奥様のお母さんとも20年同居されたとのことで、フィクションでない温か味が出ている。
 この一文を書くにあたって自己紹介のメモを頂戴するまで、熱心なクリスチャンという以外、敏治さんの経歴は全く存じ上げなかった。有能なビジネスマンとして右肩上がりの時代を泳いで来られたことを知って、「我が人生いつも走って来たような」の一句に籠められた深さが伝わった。
 敏治さんが躓かれたのは72歳の時の胃癌であろう。幸いにも0期ですっかり元気になられた今、念のため断酒を心掛けておられるらしい。とかく酒飲みは少しでも飲むと元のうわばみに戻ると聞くので、健康で長生きのために、本物の断酒を達成して頂きたい。
 ここで敏治さんの人となりを紹介。「誰もが親しみを持つ」「行動派」「世話好き」。実にまめに周りの方の世話をされる。講座や句会で不明な点があると、即座に調べて的を射た連絡を下さる。これが実に有難く周りがどれほど助けられているか知れない。
 行動派であるからして多趣味。現在はヨガ・太極拳・スイムに絞っておられるのは、川柳の句会や大会出席にお忙しいからであろうか。
 ご家庭においては、それぞれ結婚された三人の息子さんのうちご長男家族と同居。ご夫婦でいいお爺ちゃんお婆ちゃんをなさっている様子が垣間見える。また、長年連れ添われた奥様に注がれる目は、心底暖かく、頬が自然と綻んでくる。
 先に述べたように、多趣味な敏治さんだけあって句の着想は多岐に亘っており、それぞれよくこなれている。宇宙、原発、芸能、ゴキブリなどなど、読んでいて飽きがこない。これからも広い視野を駆使して、「ウルマンの青春抱いて八十路行く」 と詠まれているように、健康に気をつけられ私たちを楽しませて下さい。

②序:百句入選を祝う(抜粋)   番傘川柳本社主幹  田中新一
 敏治さんが、川柳と出会われたのは古希を迎えられた平成19年6月のことで、南海本線・諏訪ノ森にあるキリスト教会堺聖テモテ教会で催されているテモテ川柳の会に参加されたのが始まりなのですが、その前に下地がありました。
 製鉄会社に入社されて三年目(昭和39年)から四年間、社内報の川柳欄を担当する業務に就かれていて、川柳のいろはをその時に学んでおられたようです。
 小生が学生の頃、番傘川柳本社の大先輩である青木三碧さんから「川柳は20歳、60歳」であると、教えられたことがあります。
 つまり、川柳は20歳までに、川柳の作り方を学んだ後、人生経験をたっぷり積み上げた60歳からが本真物の川柳が作れるようになると言われたのです。
 敏治さんの場合、若干のタイムラグはあるものの、人生経験はより深味を増しておられます。
 朝日なにわ柳壇への投稿は、テモテ川柳の会を指導しておられる柿花和夫さんの紹介がきっかけであったようです。柿花和夫さんから「投稿を始めたら、毎週1句だけでもいいから出し続けなさい」と言われ、9月からは毎週の投稿になったようです。それからは、掲載句と自分の作品を比較しながら随分勉強されたようで、生みの苦しみが投稿30週を超えるまで続いたようです。
 早逝されたご母堂様や晩年を共に暮らされたご岳母様を偲んでの句や世相を捉えている句などが目をひきます。そして遂に、平成28年8月20日付、「情熱がアルプス席で塩を噴く」で念願の百句入選に到達されました。敏治さんは、もうすでに次の二百句を目指して精進されています。精力的にあちこちの句会やカルチャーに参加されている敏治さんに啓発されているのは小生だけではないと思います。次の二百句目が一日でも早く来るように願っています。
 敏治さん、百句入選誠におめでとうございました。

③あとがき(抜粋)
 堺聖テモテ教会の川柳会に加わったのは、平成19年6月。当初は月に1回・1題2句、これがこなせなかった。一年経ったとき、句会を指導してくださる柿花和夫さんから「朝日なにわ柳壇」なら毎週1題を勉強できますよ」と言われた。これが朝日なにわ柳壇との出会い。没続きでようやく平成21年、初入選したものの、その年も結局のところ年間2句で終った。その様子を察してか、和夫さんは「喜寿薫風自選三百句集」を貸してくださった。字引を引きながらパソコン入力に励みました。私の川柳感を根底から覆すものでした。
 少しずつ川柳が変わっていったのでしょうか、年明けの平成22年1月、西出楓楽先生選「誇る」で一席を頂戴した。その後、朝日カルチャーでご指導いただく中に「没句と入選句の差が分かるようになったら一人前ですよ」の励ましをいただいたことも忘れられない。
 また、田中新一先生との初めての出会いにも思い出があります。平成22年10月の川柳塔千号記念句会である。お会いしたこともない駆け出しの私が、「朝日なにわ柳壇でお世話になっている」と名乗りを上げました。すると先生から「毎週熱心な方」とお言葉をいただき、すっかり舞い上がってしまいました。70歳から川柳を始め、71歳から投句を始め、72歳で初入選という遅咲き。「毎週出しなさい」「熱心な方」の励ましのお蔭で、爾来一週もサボらずに投句を続けることができ、今回の上梓となりました。
 西出楓楽先生・田中新一先生には、序文寄稿をお願いしましたところ、ご多忙且つご心痛のなか貴重な時間を割いてご執筆いただき、身に余るお言葉を頂戴しありがとうございました。衷心より感謝申し上げる次第でございます。今日を一里塚として、これからのやる気を込めて「明日を生きる」のタイトルに辿り着きました。朝日なにわ柳壇への明日からの挑戦を誓いつつ、筆を擱く。

澤井敏治 

(平成29年5月25日掲載)

10 Comments

  1. 返信
    正士 2017年6月26日

    こんばんは 澤井様 PCで澤井さんのこのページを見つけました。
    改めて掲載句読まさせて頂きました。
    いつの日か 自分も100句掲載されて本を作りたいです。
    遅くに始めた川柳ですが 今はすごく楽しんで句を作っています。
    上達しませんが いつか いつかと思って・・・
    写真は今はお休み状態です(笑)
    これからもご指導お願いしたします。 

    • 返信
      澤井敏治 2017年7月4日

      原田正士様
      よくぞ見つけてくださいました。もともと百句というミニタイプですので、簡単に作成できました。
      朝日新聞とはいえ大阪版の朝日なにわ柳壇ですが、身の回りにはすでに200句、300句の方がたくさんいらっしゃるようで、お会いするたびに励ましていただいております。ありがたいことです。

  2. 返信
    昌紀 2017年5月28日

    敏治さま
     このコメントは、私のページの敏治さんのコメントに対して発信するのではなく、ここで発信すべきでした。
     スミマセン。ちょっと意味不明になってしまいますが、全く同じコメント、再発信です。

    『敏治さま
     ありがとうございます。弱いくせに酒好きです。
       ・円高がどうあれ我が家おでん煮る
       ・素っ気ない顔に包んでいる本気
       ・痛い目に合っても減らぬ酒の量
       ・ただ酒を飲めば心を盗まれる
       ・開店より派手なチラシの店仕舞い
     特に3句目、言い得て妙。私も思い当たる節があります。』

  3. 返信
    澤井敏治 2017年5月27日

    ごめんなさい。
    この欄を使い方を理解していないようでした。
    麦乃さんの第Ⅱ信への返信として使わせてもらっていました。以降、気をつけます。

    • 返信
      森山文切 2017年5月27日

      使い方間違ってないですよ。返信の時は返信したいコメントの右上の返信をクリックで問題ありません。

  4. 返信
    麦乃 2017年5月26日

    澤井様、ありがとうございます
    大ベテランの方なのに毎週web会に参加なさっていらっしゃると言うことで改めてそちらをのぞきました。
    改めて澤井さんの作品を味あわせていただきました。
    私は参加したりしなかったりだったのですが最近は真面目に参加しています。(ボツも多いです!)
    でも楽しみたいと思っています。これからもよろしくお願いいたします。

    • 返信
      澤井敏治 2017年5月27日

      おきなわ毎週WEB句会50句の「ミニ句集」を目指すのも「手」じゃないでしょうか。競争相手は多いけど・・・。

      わたくしはすでに書かせていただいている通り、第3回からの投句者です。到着順を先着順と勘違いして毎週初鳴き狙いでガンバっているのですが、世の中には「早起き」がたくさん居られるもんですね。文切さんという若い選者の感性を学んでおります。一読明解もいいのですが、二読・三読して作意をほほ探り当てたときの痛快さも捨てたものではないと思っております。

      • 返信
        森山文切 2017年5月27日

        コメントありがとうございます。
        毎週web句会は到着順ではありません。到着順は10回ごとの外部選者との共選の時だけです。その時は到着順と明記しています。

  5. 返信
    麦乃 2017年5月26日

    澤井さま、読ませていただきました。ありがとうございます。
    何もわからない私ですが、澤井さんの作品から真摯で清廉な清々しい印象を受けました。
    私事で恐縮ですが、私はネットサーフィンに夢中になってから大小取り混ぜて入選が2千句になってからカウントをやめましたがボツになった句は何万くらいあったかしらんとふと思いを馳せました。相変わらずちっとも上達しませんがずっと川柳とは関わっていきたいと地味に思っています。

    • 返信
      澤井敏治 2017年5月26日

      初めまして。おきなわ毎週WEBでご一緒の方ですね。
      到着順の入選の場合、私同様早く出されている方の名前は記憶に残ります。
      ◎何気なく笑っていても蚊帳の外   ◎訣別にならぬ言葉を選ぶ技   ◎ストイックすぎる自分に疲れ出す  ◎見て見てとつぶやいているこぼれ種・・が印象に残っております。
      フィクションとして読むか、近詠として感じるかなど、他人様の句ですが、選者気取りで「文切選」を楽しませてもらっています。「明日あると思う八十路のまだら惚け」ですが、よろしくお願いいたします

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